バフェットの投資に対する考え方
バークシャー・ハサウェイ

ウォーレン・バフェットはいわゆるバリュー投資の代表的な投資家だと言われているが、1993年の「株主への手紙」の中で本人がこの話題について言及しているのを見つけたので、メモがわりにまとめておく。

原文と簡単な要約

http://www.berkshirehathaway.com/letters/1992.html

要点:

投資の条件は「我々が理解でき」「長期的な見通しが明るく」「正直で有能な人が経営しており」「(とても)魅力的な価格で購入(投資)できる」ビジネスであること。

それでは何が「魅力的」かどうかを決めるのか。この話題は一般的に「バリュー」「グロース」の二元論で語られがちであるが、私が思うにこの二つの要素はケツのところで繋がっており、「グロース」はどんな時でも「バリュー」を算出するための一要素である。

そもそも「バリュー投資」という言い方は冗長で、バリュー以上の価格で購入するんであればそれはそもそも投資ではなく投機である。

要点:

しかしバリュー投資という言葉は広く使われてしまっていて、典型的にそれは安いPBRやPER、配当利回りの大きさなどの数字を基準に買うことだとされているが、そんなものは投資において決定的なものとは程遠い。

同様に、事業の成長が「バリュー」について教えてくれることもほとんどない。例えば、国内航空会社の「利益のない」成長に金をつぎ込んだ投資家は多いが、産業が成長するほど株主の損害も大きくなる。

「グロース」が投資家の役に立つのは、投じた資金以上に事業リターンが増加する場合だけであり、逆に成長するほど資金が必要になるような事業の場合、グロースするほど投資家に損を与える。

要点:

50年以上前に書かれた「投資価値理論」という本では「あらゆる株式、債券、事業の価値は現在のキャッシュフローから、将来にわたる適切な利率を差し引くことによって決定される 」と述べてある。ここで株式と債券で同じ公式が使える点に注目だが、違う点がある。債券の利率や満期日は決まっているが、株式の場合には投資家側が自ら利率を計算しなくてはならない。

事業の成長性や利益の安定性、PBRやPERに関わらず、この「差し引かれたキャッシュフロー」の計算で最も安い投資を行うのがあるべき形である。さらに、この計算をした時に株式の方が債券よりも安いことが通常だが、もし債券の方が魅力的ならそっちを買うべきである。

要点:

長期にわたり大量の資本を必要とし、とても高い利益率をもたらすのが最も所有するべきビジネスであり、逆のものは最も避けるべき。残念だが、そのような事業はめったにない。利益率の高い事業のほとんどはそれほど多くの資本を必要としない傾向にある。

株式を評価する数学的計算は難しくないが、経験豊富で優秀なアナリストでも将来の「利回り」を間違えて見積もってしまいやすい。バークシャーではこれを避けるために2つの方法を取っている。まず、自分たちが理解できる事業にこだわること。そのためには単純で安定している必要がある。もしその事業が複雑でわかりにくいならば、将来のキャッシュフローを予測するのは難しい。投資において重要なのはどれだけ多くのことを知っているかではなく、むしろ何を知らないかを知っておくことなのだ。大きな間違いを避ける限り、投資家がやるべきことはとても少ない。

もう一つの方法として同じくらい重要なのは、購入する際に「安全域」にこだわること。もし、普通株の価値がその価格よりわずかに高い程度なら買わない。この原理こそがベン・グレアムが投資成功の礎石として強調していたことだ。


まとめ

以上の話は書籍やネットの記事などでも至るところでまとめられているが、実際にバフェット本人の文章として語られているのを見るとより理解しようとする気が高まる。


上に引用した箇所では大きく2つの論点があると思う。

①世間一般に言われる「バリュー」「グロース」に対するバフェットの考え方

②バフェットの投資基準


①に関する態度は明快だ。「グロース」は株式の「バリュー」を決める一つの要素にすぎず、それ以上でもそれ以外でもない。そして、「バリュー」をベースにした投資判断だけが投資(すなわち、すべての投資はバリュー投資であり、それ以外は「投機」)なのだから、わざわざバリュー投資などというのは冗長である、というスタンスらしい。


それでは何を基準に「バリュー」を測るべきかというと、「将来にわたって生み出すことが予想されるキャッシュフロー」に他ならず、PERだとかPBRなんてのを基準にバリューを測るのはちゃんちゃらおかしいとのこと。

そして、「将来のキャッシュフロー」を予測するためには事業はバフェットにも十分理解できるものでなくてはならず、だからこそ「シンプルで安定した事業」が望まれる。

以上によって事業の投資価値(=バリュー)が算出できたら、その値が現在の購入価格よりも十分に上回っている場合にその株式や債券を購入する、とのこと。

連載シリーズ (全13回)

ウォーレン・バフェット特集