(前編の続き)
住宅市場に起こっていた異変に、人より早く気がついたのが、映画や小説にも取り上げられた投機家たちです。
中でも有名なのが、研修医出身なのに2000年に「サイオン・キャピタル」を設立したマイケル・バーリと、サブプライム危機で150億ドルリターンを上げたジョン・ポールソンです。
2人とも、2004年までには住宅市場の高騰に気がついています。
しかし、住宅市場を安全に「空売り」する方法は簡単には見つかりませんでした。空売りは、もし市場の高騰が許容範囲を超えてしまうと、利益を稼ぐより先に破産してしまうリスクもある方法です。
そんな中で、一番よい方法として彼らがたどり着いたのが「CDS(Credit Default Swap)」です。
CDSは、いわゆる「デリバティブ」の一種です。貸付を行なった相手が破産(Default)してしまった場合に、その損失を保証してくれるというもの。
市場に出回っているサブプライム・ローンが崩壊すれば、その損失を保証してくれるCDSの価格も値上がりする、というわけです。反対にリスクとしてかかるのは、保険にかかる一定の保証料のみ。CDSを大量に購入すれば、手数料も莫大な金額にはなりますが、青天井というわけではありません。
マイケル・バーリは独学でその仕組みを理解した一方、ジョン・ポールソンは難解すぎて(デリバティブ自体を)敬遠していたと言います。
ジョン・ポールソンにCDS取引をすすめてくれたのは、旧友ながら部下として雇っていたパオロ・ペレグリーニです。非常に頭が切れる男でしたが人との関係を築くのが苦手で、47歳にして独身の無職(無資産)に成り果て、ポールソンに職を求めていたのです。
マイケル・バーリやジョン・ポールソンは非常に早くから異変に気がつきましたが、問題が表面化するまでには長い時間がかかりました。
特にバーリは(映画にもありましたが)ファンド出資者から訴えられるなど、非常に大変な思いをしたようです。
崩壊が始まったのは、それから2年以上が経過した2007年に入ってからのことです。