コレクター魅了の「フィギュア」関連銘柄:IP・トレンド対応とグローバル戦略

アニメやゲームの世界的人気を背景に、フィギュア市場は国内外で拡大し、コレクターズアイテムとしてもその価値を高めています。
この活気ある市場では、IP(知的財産)を軸とした商品開発やメディアミックス戦略が、各社の成長を左右する重要な鍵です。
一方で、特定人気IPへの依存構造、原材料価格や製造コストの上昇圧力、目まぐるしく変化する市場トレンドへの迅速な対応、そしてグローバルなサプライチェーンの安定性確保は、各社共通の経営課題となっています。
このようにダイナミックに変化し続けるフィギュア業界の潮流は、関連する企業の事業戦略に大きな影響を与えています。
本稿では、こうした背景を踏まえ、その中で事業を展開する企業群の取り組みと直面する課題を考察します。
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株式会社バンダイナムコホールディングスは、IP軸戦略を経営の主軸とするエンターテインメント企業グループです。
ネットワークコンテンツやゲーム、映像音楽といった幅広い事業を展開する中で、フィギュアやプラモデルなどのトイホビー事業はグループの重要な柱の一つとなっています。
特に株式会社BANDAI SPIRITSを中心に、コレクターズフィギュアやハイターゲット層向け商品の企画・開発・製造・販売を手掛けています。
IP軸戦略を核とした同社グループでは、多様なIPを活用し、主要IPのメディア展開と商品・サービスの連動を強力に進めることで、フィギュアを含むトイホビー事業の競争力を高めていると考えられます。
また、脱プラスチックへの対応として新素材の研究開発に取り組むなど、より質の高い「ものづくり」に向けた取り組みを進めています。
加えて、足元の需要増加と今後のグローバル展開を見据え、生産体制の強化を進めている点も、将来的な供給安定化と事業拡大を支える要素となる可能性があります。
リアルイベントとデジタルマーケティングを組み合わせた多角的なファンコミュニケーションも展開しています。
一方で、人気IPへの依存度は、事業運営上のリスクとなり得ます。
また、円安の進行に伴う原材料価格や燃料価格の上昇といった、外部環境の変化による原価高騰も注意すべきリスク要因です。
企業はこれらのリスクを管理しつつ、IP価値の最大化と生産・開発体制の強化により、持続的な成長を目指していく姿勢を示しています。
>>バンダイナムコについてもっと詳しく:「IP軸戦略」で飛躍的な発展!バンダイナムコホールディングスの変遷
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株式会社壽屋は、ホビー関連品の企画・開発・製造・販売を一貫して手掛ける企業です。
主要事業はプラモデルやフィギュアといった製品の展開であり、国内外の幅広い顧客層に向けた魅力的な商品を創出しています。
人気アニメ・ゲーム作品の版権を取得した製品に加え、自社オリジナルの知的財産を活用した製品も多数手掛けることで、多様なニーズへの対応を図っています。
同社は長年の経験に基づいた技術を有しているとされ、これが版権元からの評価や安定的な版権確保に影響を与える要素の一つと考えられます。
特に「TOKYO Mark」製品では、日本の製造技術を背景とした品質の高さを訴求しています。
今後の成長戦略では、主力事業の強化に加え、「プラモデル・フィギュアに続く新領域の確立」を重要な柱としています。
従来のホビーの枠を超えた製品開発にも挑戦しており、その一環として2023年に発売した「ARTIST SUPPORT ITEM」のハンドモデルは国内外で高い評価を得ました。
さらに、中国に現地コンテンツ会社との合弁会社「寿屋風正」を設立し、企画製造販売を強化。
北米地域においてもイベント出展や自社運営ECサイトを設立するなど、海外展開は継続的に推進されており、特に海外売上は年々安定した成長を続けています。
ただし、事業運営上のリスクとしては、世界経済や為替変動、エネルギー・原材料価格の上昇による製造コスト増、流行の変化が速くライフサイクルの短いホビー市場での競争激化が挙げられます。
製造の多くを中国の外部委託先に依存するファブレスモデルのため、特定の委託先への依存やサプライチェーンの安定性確保も課題です。
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株式会社タカラトミーは、創業以来の理念を基盤に、「すべてのステークホルダーの『夢』の実現のために、新しい遊びの価値を創造します」を企業理念としています。
主要事業は玩具事業であり、フィギュアやコレクティブル商品も取り扱っています。
同社のフィギュア事業は、長年培われた開発力と多様なIP活用を特徴としています。
動かして遊べる動物フィギュア「アニア」や、リアリティを追求した大人向けミニカーの「トミカプレミアム」など、強力な自社およびライセンスIPを展開。
子供向けに加え、大人向けのコレクティブル商品を充実させることで、幅広い年齢層の顧客に対応しています。
タカラトミーは「おもちゃ発」から「アソビ発」への変革を掲げ、新しい技術や体験を取り入れることを目指しています。
例えば、「アニア」のアニメ化では、フィギュアと映像コンテンツを連動させることでIP価値の向上や遊びの広がりの創出を図っているとされます。
また、「メタバース 黒ひげ危機一発」のような取り組みは、物理的な玩具をデジタル空間と融合させる可能性を示唆しており、今後のフィギュアやコレクティブルにも新たなアソビの形がもたらされるか注目される点の一つです。
一方、業績変動に影響を与える可能性のある要素として、為替相場の変動や海外事業展開に伴う様々なリスクなどが挙げられます。
加えて、フィギュア製造に不可欠なプラスチックや亜鉛ダイカスト合金といった原材料価格の高騰も、原価増や販売価格への影響を通じて業績に影響を及ぼす懸念があります。
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フリュー株式会社は、「人々のこころを豊かで幸せにする」という企業理念のもと、幅広いエンタテインメント事業を展開しています。
その中でも、キャラクタ・マーチャンダイジング事業では、人気キャラクターなどの知的財産を活用した商品の企画、製造、販売を手掛けています。
競争が激しい市場において、同社は多様なIPの獲得と迅速な商品化に注力しているとされます。
定番キャラクターに加え、人気漫画やゲームといったトレンドを踏まえた多数のIPの獲得を目指し、市場のニーズやトレンドを意識した商品の企画・商品化を進めている模様です。
版元との良好な関係構築が、有力IPの獲得に影響する要素の一つと考えられます。
商品製造においては、その品質が競争上の重要な要素の一つと認識されており、フィギュア等の原型製作、彩色、撮影といった工程における品質向上のため、研究開発活動への投資を行っています。
販売面では、国内のクレーンゲーム景品販売に加え、中国やアメリカを中心とした海外市場での販売を拡大しており、高価格帯ホビーの商品数増加などにより、販売チャネルの多角化も進められています。
一方で、商品の大半を中国の外部委託先で生産しているため、原材料費の高騰や製造委託先でのコスト上昇、さらには社会・政治的な問題が発生した場合に生産が影響を受ける可能性があります。
また、ドル建てでの取引が多いことから為替変動リスクが存在します。
これらのリスクに対し、生産拠点の分散化や多様なIPポートフォリオの構築といった対策を進めている模様です。
>>フリューについてもっと詳しく:プリ機の老舗『フリュー』がIPビジネス展開で好調!Z世代を取り込む次世代エンタメ戦略とは
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株式会社エスケイジャパンは、平成元年12月に設立されたキャラクター商品の企画販売会社です。
主に、キャラクターのぬいぐるみ、キーホルダー、家庭雑貨、電子玩具などを手掛けており、事業は「キャラクターエンタテインメント事業」と「キャラクター・ファンシー事業」の二つのセグメントに分かれています。
特にキャラクターエンタテインメント事業では、国内外のアミューズメント施設やカプセルトイ事業者向けに商品を展開しており、その中核にフィギュア商品への注力が見られます。
同社は、需要が拡大しているフィギュア商品について、安定的な提供を目指し積極的に取り組んでいます。
新規キャラクターの獲得に加えて、既存キャラクターの新たな商品企画にも挑戦することで、アミューズメント市場やカプセルトイ市場の環境変化に対応しようとしています。
生産については独自の拠点は持たず、外部の取引メーカーに委託していますが、フィギュア商品の生産能力強化のため新規成型工場の開拓も進めています。
この生産体制の構築は、市場や取引先からの多様な要望に応える上で重要な取り組みと位置づけられているようです。
また、米国や中国の連結子会社を通じ、海外市場でも活況なフィギュア商品の商品化に力を入れている点が特徴として挙げられます。
フィギュア市場の成長性を捉え、新規IPや商品企画の多様化、グローバル展開を推進する同社の姿勢は、将来的な事業拡大を目指す上での戦略的な方向性を示していると考えられます。
しかしながら、外部委託による生産体制は、為替変動や原材料高騰による生産コストの上昇や、為替変動や日米金利差等による評価損益の計上を通じて、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。