「試せない」時代に選ばれる化粧品EC銘柄――通販活用企業の共通点を探る

日本の化粧品市場では、デジタル化の進展や消費者ニーズの多様化が見られます。特に、通信販売(通販)やEC(電子商取引)を活用した化粧品販売は、コロナ禍を契機に急速に拡大 。
しかし、化粧品・医薬品業界のEC化率は、他の産業と比べてみると高くはありません 。
これは、消費者が実際に商品を試してから購入したいというニーズや、店頭でのスタッフによるアドバイスを重視する傾向が一因と考えられます。
それでも、ECモールや自社ECサイトを活用した新たな販売戦略を展開する企業が増えており、同市場は今後の成長が見込まれています。
本記事では、通販やECを活用して化粧品市場で存在感を示す日本の上場企業数社を取り上げ、それぞれの事業戦略や市場環境、取り組みについて解説します。
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ポーラ・オルビスホールディングスは、老舗ブランド「POLA」と無添加通販コスメの先駆け「ORBIS」を中核とする化粧品グループです。
訪問販売から百貨店、直営店、さらに自社ECまで多様な販路を確立し、業界内で独自のポジションを有していると考えられます。
オルビスは、シンプルで高品質なスキンケア商品を中核とし、通信販売やECで一定のプレゼンスを示しています。
肌診断サービスや定期お届けサービスなどを提供し、通販での顧客体験向上にも注力しています。
一方、ポーラはシワ改善など先進的な研究に基づいた高機能化粧品を展開しており、ビューティーディレクターを通じた販売を主軸としています。
技術面では、美白成分やシワ改善有効成分の開発など先進的な研究開発に取り組んでおり、ブランド間で研究成果を共有できる体制も特徴の一つです。
デジタル施策やグローバル展開も進められる中、同社は通販と店舗を融合させた戦略で、次世代の化粧品市場への対応を図っています。
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ファンケルは、「無添加化粧品」の先駆者として広く知られ、肌へのやさしさと安全性を追求した製品づくりを特徴とする企業の一つです。
化粧品に加え、サプリメントや青汁などを展開する健康食品事業も展開し、総合的なウェルネス領域での事業展開に取り組んでいます。
創業以来、通信販売を中核チャネルとして育てており、現在も自社ECを軸に多くのユーザーと接点を持っています。
代表商品の「マイルドクレンジングオイル」や「洗顔パウダー」は、通販市場でもロングセラーとして定着しています。
さらに、実店舗との連携を活かしたオムニチャネル戦略により、ユーザーの利便性向上とLTVの最大化を目指しています。
製造から物流、顧客対応まで自社で一貫して管理する体制により、高い品質とサービス水準の両立を追求している点も特徴の一つです。
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新日本製薬は、エイジングケア化粧品「パーフェクトワン」シリーズで知られる化粧品・健康食品メーカーです。
創業以来、通信販売に注力しており、現在も売上の大部分を通販チャネルが占める、D2Cモデルを特徴とする企業の一つと言えるでしょう。
主力の「パーフェクトワン」は、1品でスキンケアが完結する“オールインワン”のコンセプトで、忙しいミドル層を中心に一定の支持を得ているとされています。
独自のコラーゲン技術や処方設計により、手軽さと効果実感の両立を目指した製品開発を行っています。
また、若年層向けの新ブランド展開やECモールでの限定施策など、幅広い顧客層へのアプローチも強化されています。
同社の特徴の一つは、コールセンターやDMを活用した顧客フォローと、定期購入やクロスセルを通じた顧客単価の向上に取り組んでいる点にあると考えられます。
化粧品通販市場の中でも主要なプレイヤーの一つであり、オールインワン化粧品分野において有力な企業として事業展開を行っています。
>>新日本製薬についてもっと詳しく:使用率が拡大するオールインワン化粧品!国内市場でNo.1の「新日本製薬」が新規上場
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I-neは、ヘアケアや美容家電を中心に、トレンドをとらえた自社ブランドを展開する新興企業です。
主力ブランドには「BOTANIST」や「YOLU」などがあり、植物由来の成分や心地よい使用感が特徴となっています。
同社は、D2Cを特徴とし、Amazonや楽天などで活発な販売活動を行っています。
BOTANISTは、ボタニカルブームを背景にSNSで人気を獲得し、美容意識の高い若年層を中心にヒット。
美容家電「SALONIA」も、シンプルで高性能な製品がEC市場で評価を受け、アイロンやドライヤーのカテゴリで一定のシェアを有しています。
市場ニーズを素早く商品に反映するマーケットイン型の商品開発や、デジタル広告やSNSを駆使したマーケティングが同社の事業展開における特徴と考えられます。
>>I-neについてもっと詳しく:『BOTANIST』展開のI-ne社が上場へ!海外や新ブランドで持続成長を目指す
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北の達人コーポレーションは、「北の快適工房」ブランドを展開するEC専業企業で、健康食品と化粧品を軸にした少数精鋭の商品戦略で知られています。
便通改善サプリ「カイテキオリゴ」やマイクロニードル型のシート美容液「ヒアロディープパッチ」など、特定の悩みに応えるユニークな商品が特徴です。
同社は、自社サイトのみで商品を販売する完全D2Cモデルを採用しており、製品企画から広告運用、顧客対応までを内製。
Webマーケティングに注力し、広告費を抑えつつ効率的な集客を目指した取り組みが見られます。
競争が激しい化粧品市場において、ニッチ市場に特化した戦略を展開している点が特徴です。
商品数を絞り込むことでリピート率向上を図り、結果として過去には高い水準の営業利益率を示した実績があります。
>>北の達人についてもっと詳しく:「北の達人」決算:売上100億円に到達、今年は減収減益覚悟で社内体制強化へ
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ハーバー研究所は、「無添加主義」を掲げてスキンケア製品を展開する化粧品メーカーです。
創業以来、防腐剤や合成香料などを排除した肌に配慮した製品づくりを行っており、敏感肌や年齢肌の顧客層にも利用されています。
主力商品の一つである高純度スクワラン配合の美容オイルは、40年以上にわたり販売されている製品です。
その他にもビタミンC誘導体配合の美容液「薬用ホワイトレディ」など、機能性と低刺激性を兼ね備えた商品ラインナップが特徴の一つです。
通信販売を基盤とするビジネスモデルを持ち、自社ECや紙媒体を通じて定期購入や会員制度によるロイヤル顧客の育成に取り組んでいます。
オウンドメディアや会報誌による情報発信にも力を入れ、顧客との長期的な関係性構築を目指しています。
大手資本と一線を画す独自路線と品質志向が、競合との差別化につながっていると考えられ、安定したファンベースを持つブランドとして事業を継続しています。
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アルマードは、卵殻膜の美容・健康効果に着目し、化粧品やサプリメントに応用した独自ブランドを展開する専門メーカーです。
卵殻膜とは卵の内側にある薄い膜で、アミノ酸やコラーゲンを含む素材として関心が寄せられています。
主力製品は、卵殻膜エキスを高濃度で配合した美容液「チェルラーブリリオ」や、サプリメント「TO-II」など。
これらの商品は、自社ECやテレビ通販を中心に販売され、科学的根拠に基づくとされる訴求を通じて顧客との関係構築に努めています。
同社は、東京大学などとの産学連携によって研究を重ねており、卵殻膜の肌への効果や安全性についての知見を深めています。
また、原料供給においてキユーピーと提携し安定調達を図ることで、事業の独自性と継続性の両立を目指しています。
>>アルマードについてもっと詳しく:卵殻膜を活用するバイオベンチャー「アルマード」が新規上場へ