グローバルIPで勝負するトレーディングカードゲーム銘柄:海外展開とデジタル戦略

近年、トレーディングカードゲーム市場は大きな盛り上がりを見せ、多くのエンターテイメント企業がこの成長市場に熱い視線を注いでいます。
各社は、自社が長年育成してきた強力なIPを戦略の中核に据え、その世界観やキャラクターの魅力を最大限に活かした新しいカードゲームを次々と展開。
従来の物理的なカードゲームの楽しさに加え、デジタル技術を融合させた新たな体験価値の提供や、言語の壁を越えて世界中のファンに届けるグローバルな市場開拓も積極的に進められています。
M&Aによる事業基盤の強化や、新たなプレイヤーの参入など、市場は常にダイナミックに変化しています。
本記事では、そうした有力企業がそれぞれの強みを活かし、いかにしてこの競争と革新の市場を切り拓いているのか、その取り組みに光を当てます。
バンダイナムコホールディングスのエンターテインメントユニットにおいて、株式会社バンダイがトイホビー事業を担い、カード事業を展開しています。
同社のカード事業は、卓上で遊ぶ「トレーディングカードゲーム」、ゲームセンターなどの筐体で楽しむ「アーケードカードゲーム」、集めて楽しむ「コレクションカード」、そしてスマートフォンやPCで遊べる「デジタルカード」という4つの主要カテゴリーで構成されています。
特に「ONE PIECEカードゲーム」は2022年の発売以来、世界的な人気を獲得し、世界9つのエリアで大型ツアーイベントが開催されるなど、国際的な広がりを見せています。
さらに、2024年には「ドラゴンボールスーパーカードゲーム フュージョンワールド」を世界同時期に展開。2025年には「ガンダムカードゲーム」の本リリースを予定するなど、IPを活かした新商品を展開しています。
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同社の事業展開における特徴の一つは、年間530を超える豊富なIPを活用する「IP軸戦略」です。
キャラクターや物語の世界観を活かした商品・サービスを展開することで、IPの価値向上を目指しています。さらに日本アニメの世界的な人気の高まりを背景に、特に北米や中国市場への海外展開も行っています。
また、自社生産拠点とパートナー企業との連携などを通じて、製品の安定供給体制を構築しています。リアルイベントの開催やオフィシャルショップの展開、公式通販サイト「プレミアムバンダイ」の運営など、顧客との関係構築にも力を入れています。
>「IP軸戦略」で飛躍的な発展!バンダイナムコホールディングスの変遷
コナミグループのトレーディングカード事業は、同社のデジタルエンタテインメント事業セグメントの中核を担う分野の一つです。その強固な基盤となっているのが、世界的に高い認知度を誇るIP「遊戯王」です。
同社は「遊戯王オフィシャルカードゲーム」や若年層をターゲットとした「遊戯王ラッシュデュエル」といった物理的なトレーディングカードゲームを提供し続けています。
また、デジタル領域への展開にも積極的で、デジタルカードゲーム「遊戯王 マスターデュエル」が全世界で累計8,000万ダウンロードを突破するなど、大きな成功を収めています。
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この成功は、物理カードとデジタルゲームの連携という、現代のユーザーニーズを捉えた戦略の成果と考えられます。
「遊戯王カードゲーム」の25周年を記念し、過去の歴代デジタルゲームを収録した「遊戯王 アーリーデイズコレクション」を発売するなど、長年のファンに向けた施策も展開。
さらにYouTubeでプロモーションアニメ「Yu-Gi-Oh! CARD GAME THE CHRONICLES」を配信し、メディアミックスを通じて「遊戯王」の世界観を広げ、ファンとの関係構築を進めています。
コナミグループは、伝統あるIPを活用し、新たなアプローチでトレーディングカード市場に取り組んでいます。
タカラトミーの事業の中でも、トレーディングカードゲーム分野は、長年にわたり培ってきたIPを活かした展開が特徴として挙げられます。
なかでも「デュエル・マスターズ」は、同社を代表するTCGとして知られています。
さらに、新たに「ディズニー・ロルカナ・トレーディングカードゲーム」(2025年1月発売予定)や「名探偵コナンカードゲーム」(2025年5月発売予定)といったタイトルを市場に投入し、ラインナップの拡充を図っています。
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同社は、これらのIPを重要な経営資本と捉え、「守る」「備える」「育てる」という方針のもとで活用しています。
また、製品はお子様だけでなく、アソビ心を持つ大人まで、幅広い世代の顧客層を視野に入れて開発されており、長期的な顧客との関係構築を目指しています。安全品質への意識を持ち、商品提供のための体制構築にも注力しています。
ブシロードは、トレーディングカードゲームの企画開発・販売を祖業とし、IPの創出から多角的なコンテンツ展開までを手掛ける総合エンターテイメント企業です。
同社は「ヴァイスシュヴァルツ」や「カードファイト!! ヴァンガード」といった主力タイトルを擁し、これらはそれぞれ150以上の多様なIPとの連携や、積極的なメディアミックス戦略を通じて、世界数十カ国・地域へと展開されています。
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さらにCygames社との共同開発による「Shadowverse EVOLVE」や、新たなファン層へアプローチする「ヴァイスシュヴァルツブラウ」といった派生ブランドも展開。
ほかにも野球を題材とした「ドリームオーダー」、VTuberグループ「hololive production」を起用した「hololive OFFICIAL CARD GAME」、アニメ作品を原作とする「五等分の花嫁 カードゲーム」や「ラブライブ!シリーズ オフィシャルカードゲーム」など、新作TCGを市場に投入しています。
コンテンツ開発の初期段階からグローバル市場を意識し、世界標準の品質と展開を目指す姿勢で取り組んでいます。
スリーブやプレイマットといった関連商品の充実や、国内外での大型イベント開催を通じたコミュニティ形成にも注力しており、総合的なエンターテイメント体験の提供を目指しています。
>子会社には新日本プロレスも!ゲーム〜プロレスまで展開する「ブシロード」が上場承認
KADOKAWAは2024年5月31日、アナログゲームやトレーディングカードゲームなどの企画・開発・販売を手掛ける株式会社アークライトを完全子会社化しました
KADOKAWAは豊富な自社IPを核とした「グローバル・メディアミックス」戦略を強みとしており、アニメ、映画、ゲーム、グッズなど多様な形態でコンテンツを国内外に展開しています。
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アークライトの子会社化は、このメディアミックス展開に新たな選択肢をもたらし、特にアナログゲームやTCGといった分野でのIP活用を促進する可能性があります。
現時点では、アークライトが具体的にどのようなTCGタイトルや関連サービスをKADOKAWAグループ内で展開していくか詳細は明らかにされていません。
しかし、KADOKAWAが持つIP創出力や編集力、グローバルな販売網と、アークライトが持つとされるアナログゲームやTCG分野でのノウハウが融合することにより、新たなコンテンツ展開や、既存IPの活用を進めていくことが見込まれます。
>業績は絶好調のKADOKAWA 狙うは“グローバル・メディアミックス”
円谷フィールズホールディングスは、世界的に高い知名度を誇る「ウルトラマン」という強力なIPを擁しています。コンテンツ&デジタル事業セグメントにおいてトレーディングカードゲーム事業への本格参入を果たしました。
その中核となるのが、2024年10月に世界15ヶ国・地域で同時発売を予定した「ウルトラマン カードゲーム」です。
この商品は、ウルトラマンシリーズの壮大な世界観をベースに、子供から大人まで楽しめる戦略的なゲーム性と、世界各国のクリエイターによる描き下ろしイラストを用いた高いコレクション性を融合させています。
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またウルトラマン人気の高い中国市場も考慮し、TCG業界でも先駆けとなる日本語、英語、簡体字、繁体字の4言語に対応したグローバル仕様。世界15カ国で大規模な同時展開を行っています。
さらに同社は、物理的なカードゲーム体験を補完・拡張するデジタルカードコレクションサービス「ULTRAMAN DIGITAL CARD COLLECTION」を2024年中にリリース。物理的なカードゲームとデジタルの連携による新たなユーザー体験の提供を目指しています。