ディスカウントストア銘柄特集!独自商品やローコスト運営などの事例を紹介

物価上昇が家計への影響を続ける昨今、消費者の節約志向は一層強まり、低価格戦略を掲げるディスカウントストアや関連小売企業への注目が集まっています。しかし、これらの企業が一様に同じ手法で低価格を実現しているわけではありません。
独自のプライベートブランド開発、リテールAIやデータ活用による徹底した効率化、食の製販一体体制の構築、単品集中販売や多様な店舗フォーマットの展開といった、各社各様の戦略で競争優位性を追求しています。
今回は、国内の主要ディスカウントストア関連銘柄を複数取り上げ、それぞれのビジネスモデル、強みとなる独自戦略、そして事業運営上のリスクや課題について、具体的な事例を交えながら多角的に分析します。
finboard
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、ディスカウントストア事業を中核とする小売企業グループです。
2013年に持株会社体制へ移行し、国内外で多様な店舗を展開しています。
同社グループは、国内市場で「ドン・キホーテ」や「MEGAドン・キホーテ」、「ユニー」を展開し、小売分野で存在感を示しています。
特徴として、現場への権限委譲による現場主義・個店主義と、変化に迅速に対応する攻めの経営が挙げられます。
商品開発ではプライベートブランド「情熱価格」を強化し、自社電子マネー「majica」等のデジタル活用も積極的です。
市場成長性では、北米やアジア地域での海外進出を加速し、特にアジア地域にて「DON DON DONKI」を展開しています。
国内外で積極的な店舗運営と新規出店を進めており、連結売上高は2024年6月期に2兆円を超え、Visionary 2025で掲げた売上目標を1年前倒しで達成しました。
一方で、事業運営上のリスクも存在します。
収益性低下店舗での減損損失計上があり、予測困難なビジネス環境の変化への対応が求められます。
同社は独自の経営戦略を通じて、市場の変化への対応を目指しています。
>>パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスについてもっと詳しく:【注目決算】ドンキ運営のPPIH 7〜9月最高益 節約志向の受け皿に、PB販売も好調
finboard
株式会社トライアルホールディングスは、1974年に創業した小売企業を源流とし、現在は持株会社として流通小売事業やリテールAI事業などを展開しています。
同社は「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを変える。」というビジョンを掲げ、小売業界の変革を目指しています。
主要事業であるディスカウントストア「TRIAL」は、EDLP(Every Day Low Price)とEDLC(Every Day Low Cost)を基盤に、多様な店舗フォーマットで全国展開しています。
幅広い商品構成や、建築子会社によるコスト効率の高い店舗開発を、同社は競争優位性の一つとして位置づけています。
特に食品の商品開発を強化することで、集客と収益性の向上を目指しています。
同社の特徴は、リテールAI事業への積極投資です。自社開発のPC-POSシステムを核に、スマートショッピングカートSkip Cartやデータ分析プラットフォームMD-Linkといった独自技術を展開しています。
これらの技術は店舗運営の効率化や顧客体験向上に資するものとして、自社実践での知見を基に外部企業へも提供されています。
一方で、事業運営上のリスクも存在します。リテールテック市場はその成長に伴い、競争が激化する可能性があります。
また、海外からのIoTデバイスの調達が滞るなどのサプライチェーンに関するリスクが存在します。
リテールAI事業は先行投資段階にあり、2024年6月期まで連続してセグメント損失を計上しています。
>>トライアルホールディングスについてもっと詳しく:小売チェーンだけどIT企業!流通産業の革命児「トライアルHD」が新規上場へ
finboard
株式会社神戸物産は、主に「業務スーパー」を主軸とした事業を展開しています。
この事業は、食料品の製造から販売までを一貫して行う「食の製販一体体制」を特徴としており、これにより、同社は高品質な商品を抑えた価格で顧客に提供する体制を構築し、競争力の一因としています。
食品スーパー業界は、インフレによる消費者の節約志向やコスト増加といった厳しい環境が続いています。
そこで同社グループは、自社製造によるプライベートブランド商品や海外からの直輸入によるコスト抑制を通じて、こうした市場環境への対応を行っています。
フランチャイズ(FC)方式による店舗展開も進めており、広範な地域にわたるネットワークを構築しています。
また、外食・中食事業やエコ再生エネルギー事業など、事業領域の多角化も図っています。
企業の成長戦略としては、製造工場の生産能力増強や積極的な商品開発により、グループ全体の競争力をさらに高める方針です。さらに、M&Aを通じて製造基盤や事業の強化も進めており、将来的な市場シェア拡大や事業の深化を目指しています。
しかしながら、事業運営にはいくつかのリスクも存在します。
為替変動やエネルギーコストの高騰、天候不順や国際情勢の混乱などによる仕入価格の変動や商品供給の不安定化は、同社の強みである価格競争力に影響を与える可能性があります。
また、物流拠点の集中や異常気象によるサプライチェーンの寸断リスクも指摘されています。
>>神戸物産についてもっと詳しく:業務スーパー流のDXとは?神戸物産・沼田博和社長インタビュー
finboard
株式会社ミスターマックス・ホールディングスは、主に小売事業、特にディスカウントストアを中核とする企業グループです。
グループは持株会社である同社と、主力のディスカウントストア事業を担う株式会社ミスターマックス、物流事業の株式会社ロジディア、中国でのEC事業を行う上海最高先生商貿有限公司で構成されています。
同社グループの市場における最大の強みは、EDLP・EDLC競争戦略にあります。
品質と価格の最適なバランスを追求した「価値ある安さ」の提供を、同社は市場での競争力強化の柱としているのです。
単品集中販売による低価格実現や、本部業務削減、店舗オペレーションの効率化などを通じて、継続的な生産性向上に向けた取り組みが見られます。
また、地域特性に合わせた多様な店舗面積での展開や、既存店改装による買い物のしやすさ向上にも注力しており、顧客からの支持を得るための努力を続けています。
将来に向けた課題として、変化の速い市場環境にいかに対応するかが重要であると認識されています。
これに対応するため、既存店舗の改装や機器入替えといった設備投資を計画し、競争力維持・強化に向けた具体的な施策を進めています。
事業運営上の留意点として、対処すべき課題である変化の速い市場環境への対応力が挙げられます。
また、EDLC戦略の根幹であるコスト運営は収益力向上のために注力すべき点であり、有利子負債にかかる金利変動リスクなど、事業運営上の留意点として注視していく必要があります。
finboard
大黒天物産は、1993年に設立された食品を中心とするスーパーマーケット事業を主軸とする企業です。
その経営の核は、ESLP(エブリデイ・セーム・ロープライス)戦略に基づき、徹底したローコスト経営によって「どこよりも安く買物していただける店」を提供する点にあります。
これにより事業規模の拡大とマスメリットの追求を図っているようです。
競争環境が厳しい小売業界において、同社は独自の取り組みを通じて競争力の確立を目指しています。
高品質ながら低価格なプライベートブランド(PB)やブルーオーシャン(BO)商品の開発・改良を推進。
加えて、自社物流網を構築して物流コストを削減し、産地からの最短定温物流で生鮮食品の鮮度向上に努めています。
さらに、センター供給比率の高いSFOフォーマット店舗の拡大は、出店・運営コストの削減に繋がるものと同社は位置づけています。
大黒天物産は既存の展開地域に加え、新たな地域への積極的な多店舗化出店を成長戦略の柱としています。
店舗網の拡大は、物流センターの稼働率向上や、さらなるコスト競争力強化に繋がる可能性があると同社は認識しています。
もっとも、事業運営にはいくつかの潜在的なリスクも存在します。出店地域の拡大は競合の激化や価格競争を招く可能性があります。
また、エネルギー価格や物流費、人件費などのコスト上昇が継続することも予想されます。
加えて、子会社が営む酪農事業や魚の養殖事業においては、疾病発生や飼育環境の悪化により生産・販売に影響が出るリスクが指摘されています。
finboard
株式会社ジェーソンは、1983年の実質創業以来、首都圏を中心にディスカウントストア「ジェーソン」を展開しています。
事業の核は小売であり、衣料服飾、日用品、食料品、酒類といった幅広い商品を扱っています。
自社で企画開発するプライベートブランド(PB)商品や、特定のメーカーと連携するジョイントベンチャー(JV)商品の強化が、同社の事業における特徴の一つです。
これらの商品は、食料品を中心に販売が堅調に推移しています。
また、商品仕入を行う子会社や、飲料水製造の子会社を持つことで、供給体制を構築している点も特徴です。
効率的な事業運営を目指し、商品自動補充発注システム「JIOS」などの自社開発ITシステムを活用し、物流の内製化も進めています。
これにより低コスト経営の実現と価格競争力の維持を目指しています。
現在の市場環境では物価高が進行しており、物価高に対抗する低価格戦略を進める同社の事業は、主力商品の販売が堅調に推移するなど、一定の機会を得ています。
そこで同社は、新規出店を継続し、事業規模の拡大を図っています。
子会社ではPB商品の生産能力増強も実施されました。
しかしながら、事業運営上のリスクも存在します。
自社開発システムへの依存は、サイバー攻撃やシステム障害発生時のリスクにつながる可能性があります。
さらに、居抜き物件を主体とした出店戦略であることから、不動産市場の状況等により出店条件が合致しない場合、計画通りの新規出店が進まないリスクも存在します。
finboard
株式会社PLANTは、1982年に設立された小売企業であり、衣食住のあらゆる生活必需品を網羅的に取り扱うスーパーセンターを主要な事業形態としています。
同社は地域密着型の営業展開に注力しており、主に都市部から離れたルーラル地域に出店しています。
これにより、地域住民の日常生活に必要な商品を幅広く提供することで、生活基盤を支える役割を果たすことを方針としています。
経営方針として、地域ニーズに合致した豊富な品揃えに加え、徹底したローコスト・オペレーションによる低価格での商品提供を重視しています。
これは、同社が競争優位性を確立する上で核と位置づける要素の一つです。「生活のよりどころとなる店」を目指し、常にお客様にとって価値のある店舗であり続けるための取り組みを進めているようです。
今日のEC市場の拡大は、リアル店舗を主とする同社にとって重要な経営課題の一つです。
同社もネット販売を始めていますが、先行するEC企業への消費者の流出はリスク要因として認識されています。
加えて、「改正まちづくり三法」といった関連法律の規制も、新規出店戦略に影響を与える可能性があります。
このような状況下で、同社は収益力強化や業務改革(R-9など)といった施策に取り組んでおり、効率化を図りながら競争力維持に努めています。
ルーラル地域での事業展開は、地域社会との共生を目指すという同社の理念に合致していますが、その地域固有の市場状況の変化や客数変動、売上総利益率の低下といった懸念も存在します。
finboard
ヒラキ株式会社は1978年に靴の小売業として設立され、現在は靴を中心に通信販売事業、店舗販売事業、卸販売事業の3つの事業セグメントを展開しています。
安さを核とした事業モデルが特徴で、その背景には、多彩な販売チャネルを活用した事業展開や、品質にこだわったオリジナル商品開発などがあります。
市場における同社のポジショニングは、通信販売、店舗、卸という多角的な販売網を活用した商品在庫の最適化を図りつつ、地域に根差した店舗運営やECを中心とした通信販売の拡大を進めています。
また、事業運営の効率化のため、ビッグデータ分析システムを活用。
販売予測の精度向上や単品単位での商品在庫の見える化を推進し、機動的な販売促進や売上最大化、在庫最小化に取り組んでいます。
同社は、外部環境の変化への対応として、機能性などの付加価値を持つ商品の開発や新事業領域への挑戦を進めています。
中長期的な視点では、人材の質と多様性確保、教育体制の充実に注力しており、これらが今後の事業基盤の強化に繋がるか注目されます。
事業運営上のリスクとしては、為替変動による輸入原材料価格の上昇、季節商品における天候・流行の変化による在庫変動、SKU数の多さに伴う在庫適正化の難しさなどが挙げられます。
また、顧客情報漏洩リスクへの対策も継続して求められます。不確実な市場環境への適応も事業継続において重要な課題です。
finboard
株式会社Olympicグループは、小売業および小売周辺事業を主軸とする企業グループです。
食品や生活用品の販売に加え、自転車、ペット用品、DIY・ガーデニング用品、ゴルフ用品、自動車用品など、幅広い分野の専門店を展開しています。
また、惣菜製造、物流センター運営、システム開発といった小売周辺事業も手掛けており、事業領域の多角化が見られます。
特に専門店分野では、独自の取り組みを通じて競争力の向上を目指しています。
例えば、自転車事業では独自商品の開発に注力し、ペット事業では動物病院との連携による総合サービスを提供、DIY事業ではプロのニーズに応えるサービスと一般顧客向け店舗づくりの両面を追求しています。
同社グループは、主に関東地方の1都3県を中心に出店を進めています。
店舗規模や地域特性に応じて、ディスカウントストア、食品スーパー、またはこれらを組み合わせた複合店舗、さらには専門店を併設する形で展開し、柔軟な事業戦略を推進している状況です。
市場環境の変動、景気や個人消費動向の影響、同業他社との競争は、同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
また、大規模小売店舗立地法による出店規制、借入金の金利変動、保有資産の減損リスク、敷金・保証金等の回収リスク、自然災害や感染症の拡大による店舗運営への支障などもリスク要因として考えられます。
エネルギーコストの上昇に対しては、省エネ設備の導入拡大や電力使用量のコントロールといった対策を講じています。