激戦の消費者向けヘアケア市場:主要4銘柄のポジショニング分析

私たちの毎日の生活に欠かせないシャンプーやトリートメントといったヘアケア製品。一見すると成熟市場のようにも思えますが、その実態は消費者のニーズの多様化と技術革新が絶え間なく進む、ダイナミックな競争の舞台です。
ドラッグストアの棚を見渡せば、ダメージケア、エイジングケア、スカルプケア、オーガニック志向、サロン品質など、細分化された悩みに応える無数の製品が並び、国内外の有力メーカーや新興ブランドがしのぎを削っています。
長年の研究開発による機能性を追求する企業、マーケティングとブランド構築で消費者の心を掴む企業、あるいは特定のターゲット層に特化することで確固たる地位を築く企業など、そのアプローチは様々です。市場トレンドの変化も速く、企業には常に変化への対応力が求められます。
この記事では、一般消費者向けヘアケア市場において、それぞれ異なる強みと戦略で存在感を示す代表的な企業に着目します。
花王のヘアケア分野は国内トップクラスの地位を確立しています。同社は「メリット」や「エッセンシャル」といった長年の定番ブランドに加え、「セグレタ」のようなエイジングケアに特化した製品を提供。さらに「リーゼ」などのスタイリング・カラー剤まで、幅広いニーズに応えるブランドポートフォリオを展開しています。
花王の強みのひとつとして、100年以上にわたる毛髪研究に裏打ちされた高い研究開発力があります。
キューティクルケアや地肌ケア、近年注目される髪のラメラ構造に着目した技術など、基礎研究から生まれた独自の技術を製品開発に応用し、高い機能性と品質を追求しています。
この技術力は、新ブランドの開発にも繋がっており、近年投入されたプレミアム価格帯の「melt」や「THE ANSWER」は、市場に新たな選択肢を提供しています。
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一般消費者向けヘアケア市場は、国内外の有力企業や新興勢力がひしめく競争の激しい分野です。しかし、花王は長年培ってきた研究開発力、多様なブランド群を武器に、市場での存在感を示しています。
近年はマス市場での基盤を維持しつつ、プレミアム市場への戦略的な取り組みを進めています。
近年は、マス市場での基盤を維持しつつ、プレミアム市場への戦略的な取り組みを進めています。同社の継続的な技術革新への取り組み、特に毛髪科学分野における先進性と、市場トレンドを捉えたプレミアムブランド戦略の進捗は、注目すべき動向と言えるでしょう。
競争環境の変化に対応しながら、研究開発力を核とした価値創造を続けることが、今後の市場におけるポジションに影響を与えると考えられます。
株式会社コーセーは、1946年創業の大手化粧品メーカーであり、「コスメデコルテ」や「雪肌精」といったブランドで広く知られています。
同社の事業は化粧品事業が主力ですが、子会社のコーセーコスメポートが展開する「コスメタリー事業」も重要な柱です。この事業では、ドラッグストアなどを中心に、一般消費者向けのスキンケアやヘアケア製品を提供しており、ヘアケア分野でも製品展開を行っています。
「Je l'aime(ジュレーム)」のノンシリコン処方や、「BIOLISS」のボタニカルコンセプト、「SALON STYLE」の健康な髪・地肌を目指したコンセプトなど、明確なコンセプトを持つ多様なヘアケアブランドを展開しているのが特徴です。
これにより、細分化する消費者の髪の悩みや嗜好に対応することを目指しています。市場トレンドを取り入れる姿勢や、化粧品開発で培われたコーセーグループの研究開発力、品質管理基準が、これらの製品開発の背景にあると考えられます。
>詳しい解説記事はこちら「営業利益率が5年で2.3倍に 資生堂や花王を営業利益率で上回る「コーセー」
株式会社マンダムは、1927年設立の歴史ある化粧品メーカーです。特に男性用化粧品分野で広く認知されており、「ギャツビー」や「ルシード」といったブランドは幅広い世代に浸透しています。
ヘアケア領域においても、これらのブランドを通じて製品展開を行っており、同社の主要な事業の一つです。近年は女性向けブランド「ルシードエル」にも注力し、事業ポートフォリオの多様化を図る動きも見られます。
マンダムは、国内の男性用ヘアスタイリング剤市場において、長年にわたり広く認知されたブランドを有しています。
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「ギャツビー」は若年層男性のトレンドを意識した多様な製品ラインナップを展開。「ルシード」は40代以上のミドルエイジ男性特有の髪や頭皮の悩みに着目した製品開発を行ってきました。
長年の研究開発で培われたスタイリング基剤技術や、ミドル脂臭に対応する技術などは、同社の製品開発における特徴の一つと考えられます。
女性向けヘアケア市場においても、「ルシードエル」ブランドを通じて、サロン技術発想のオイルトリートメントや酸熱トリートメントといったトレンドを取り入れた製品を展開しています。アジア市場、特にインドネシアでの事業経験やブランド認知も同社の事業展開における特徴として挙げられます。
株式会社I-neは、2007年設立の企業で、「BOTANIST」や「YOLU」といった広く知られるブランドを生み出し、一般消費者向けヘアケア市場で存在感を増しているファブレスメーカーです。
製造を外部に委託し、自社は商品の企画開発やマーケティングに注力しています。特にデジタルマーケティングを活用したブランド構築は、同社の特徴の一つと言えるでしょう。
I-neのヘアケアブランドは、「BOTANIST」の植物由来成分への着目や、「YOLU」の睡眠中の髪ダメージに着目したナイトケアという考え方、「DROAS」の泥(クレイ)美容など、それぞれがユニークなコンセプトを持っています。
これらのブランドは、消費者のニーズや市場トレンドを意識し、SNSなどを活用したデジタル戦略によって認知を高め、ドラッグストアなどの実店舗での販売に繋がっています。
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この「DtoC & OMO (Online Merges with Offline)」と呼ばれる、オンラインでのブランド育成とオフラインでの販売拡大を連携させるビジネスモデルは、同社の事業展開において特徴的な要素となっています。
これにより、ドラッグストア市場のシャンプー・リンスカテゴリーにおいて、一定の市場ポジションを築いています。
ヘアケア事業での経験を活かし、美容家電やスキンケア、海外市場へと事業領域を拡大する多角化戦略を進めており、今後の事業展開が注目されます。
I-neの詳しい特集記事はこちら
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