日経平均と連動しやすい銘柄は?ベータ値・相関係数から探る企業事例

日経平均と連動しやすい銘柄を把握することで、市場全体の流れを効率的に捉えることができます。
特定の銘柄がどれだけ指数と同じ動きをするかを知ることは、投資判断やリスク管理にも有効です。
そこで、本記事では、ベータ値や相関係数といった指標をもとに、日経平均との連動性が相対的に高いとされる企業の一例を紹介します。
日経平均に連動しやすい銘柄には、いくつかの共通点があります。
具体的には、構成比が高い企業や、輸出・テクノロジー系の銘柄は、指数と強く連動しやすい傾向があります。
以下は、日経平均との連動性が高いと思われる企業の一例です。
・ファーストリテイリング
(主な事業:小売 / 特徴とされる点:日経平均への構成比率が相対的に高い)
・ソフトバンクグループ
(主な事業:情報通信 / 特徴とされる点:市場におけるボラティリティが比較的高い傾向)
・ファナック
(主な事業:機械 / 特徴とされる点:過去のデータから比較的安定した連動性が見られた例)
・東京エレクトロン
(主な事業:半導体製造装置 / 特徴とされる点:過去のデータからベータ値が比較的高い傾向)
・ダイキン工業
(主な事業:機械 / 特徴とされる点:為替変動への感応度が比較的高いとされる)
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ユニクロを展開するファーストリテイリングは、日経平均株価指数において構成比率が高い銘柄の一つです(寄与度約11%)。株価のベータ値はほぼ1と高く、市場指数と連動した値動きをしやすい傾向があります。
2024年8月期通期は売上収益3兆1038億円(前年比+12.2%)、営業利益5009億円(+31.4%)と、いずれも過去最高の業績を記録しました。
事業別に見ると、国内ユニクロ事業では、インバウンド需要の増加やコスト管理の進展などにより利益が増加しました。海外ユニクロ事業においても、各地域で売上が伸長し、海外売上比率は全体の約60%を占めています。
特にアジア地域を中心としたグローバル展開が業績に寄与しています。
中国市場では店舗戦略の見直しなどの構造改革が進められ、北米および欧州市場でも売上の増加が見られました。
こうした国内外の事業動向は株価形成に影響を与える要素の一つです。
一方で、好調な決算内容が発表された場合でも、それが市場の事前予想と比較してどのような結果であったかなどにより、株価が大きく変動する可能性も考慮する必要があります。
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ソフトバンクグループは、日経平均株価指数において構成比率が約4%と相対的に高く、指数全体への影響が大きいとされる銘柄の一つです。
同社の株価のベータ値は1を上回る水準にあり、市場全体の動きに対して感応度が高い傾向が見られます。
2025年3月期第3四半期の決算では、売上高が5兆3,026億円(前年同期比+6.0%)、親会社株主に帰属する四半期利益は1兆576億円と大幅な増益を記録しました。
事業別では、投資事業において、アリババ株やTモバイル株の売却益などが寄与し、持株会社投資事業の投資利益は2兆85億円でした。
また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業からは2,608億円の投資利益が計上されました。
同社の株価は、市場環境や為替相場の影響を受けることがあり、短期的な価格変動が比較的大きい特性を持つとされています。
そのため、一部の市場参加者からは、日経平均株価との連動性やその値動きの特性に関心が寄せられることがあります。
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ファナックは、CNC装置や産業用ロボットを手がける工作機械メーカーです。日経平均株価指数の構成銘柄の一つであり、その動向は製造業全体の市場環境を反映しやすい特性を持つとされています。
2024年度第3四半期は、売上高5,850億円、純利益1,028億円となり、前年同期比で減収減益でした。
地域別の業績を見ると、中国市場における売上高は前年同期比で28.5%増加しましたが、欧州および米州市場では減収となりました。
セグメント別では、FA部門やロボマシン部門の売上は増加を維持したものの、ロボット部門は調整局面にあると報告されています。
同社は、製品の生涯保守体制や高い信頼性で評価されており、その業績は設備投資の動向と連動する傾向があると分析されています。
日経平均株価との相関性が比較的高いことや、業績が景気動向に影響されやすい特性から、市場では景気敏感株の一つとして認識されています。
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東京エレクトロンは、半導体製造装置の開発・製造を手掛ける企業で、日経平均株価の構成銘柄の一つです。
同社の株価は、半導体市場の動向や技術革新の進展に影響を受けやすく、日経平均株価と比較的高い連動性を示す傾向があるとされています。
2025年3月期第3四半期の連結業績は、売上高1兆7,700億円(前年同期比+38.4%)、営業利益5,100億円となり、前年同期に対し増収増益となりました。この業績には、特にメモリ向け製品の需要増加が寄与しました。
同社は研究開発への投資を継続しており、累計研究開発費は前年同期比15%増の1,800億円に達し、最先端技術の開発を推進しています。
また、同社は、IoTやAIの普及に伴うデータ社会の進展を踏まえ、半導体製造装置市場が今後も拡大する可能性があるとの見方を示しています。
東京エレクトロンの株価は、半導体市場の動向や技術革新の進展に敏感に反応する特性から、日経平均株価と比較的連動しやすいとされる銘柄の一つとして認識されています。
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ダイキン工業は、空調機器の製造・販売を手掛ける企業として国際的に事業を展開しています。
同社の株価は、日経平均株価と比較的高い連動性を示す傾向があるとされています。
2025年3月期第3四半期の連結業績は、売上高3兆5,932億円(前年同期比+10.1%)、営業利益3,187億円(同+4.0%)と、増収増益を達成しました。
この業績には、特にアジア地域における販売拡大が寄与しました。
同社は、環境負荷低減を考慮した製品開発や、IoT技術を活用したサービスの提供に力を入れています。
また、研究開発投資も継続しており、最先端技術の開発を推進していると報告されています。
ダイキン工業の株価は、空調市場の動向や技術革新の進展に影響を受ける傾向が見られます。
そのため、日経平均株価との連動性が比較的高いとされる銘柄の一つとして認識されています。
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日経平均株価は、国内主要企業225社の株価から構成される指標です。
構成は価格加重平均で、株価の高い銘柄ほど指数に与える影響が大きくなります。
このため、日経平均と連動しやすい銘柄を押さえることで、市場全体の値動きを効率的に捉えることができます。 特に指数の寄与度が高い企業は、日経平均の上下に直接関わります。
また、こうした銘柄はインデックス運用に組み込まれやすく、需給面でも注目されやすい特徴があります。
短期トレーダーにとってはタイミング判断の参考になり、ファンド運用者にとってはリスク管理の一助となります。
日経平均との連動性を分析する際に、有効な定量指標が2つあります。それが「ベータ値」と「相関係数」です。
ベータ値は、個別株が市場全体と比べてどの程度動くかを示します。日経平均を基準値1とし、それより大きければ変動が大きいと判断されます。たとえばベータ値1.5であれば、指数が2%動いたときに3%動く可能性があることを意味します。
一方、相関係数は、日経平均とどれだけ同じ方向に動くかを測る指標です。値は−1から+1の間で変動し、+ 1に近いほど連動性が高いとされます。
ベータ値は値幅の大きさを、相関係数は方向性の一致度を表します。
それぞれの性質を理解しておくことで、目的に応じた銘柄選定に役立てることができます。
たとえば、短期売買ではベータ値が高い銘柄が注目されやすく、一方で市場全体の動きを掴むなら、相関係数が高い銘柄が参考になります。
以下に、主要な銘柄のベータ値と相関係数を示します。
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日経平均株価と連動性が高いとされる銘柄は、その特性から様々な投資戦略のアイデアに応用されることがあります。
例えば、日経平均株価の構成比率が高い一部の銘柄(例:ファーストリテイリングや東京エレクトロンなど、過去に構成比率が高かったとされる大型株)を複数組み合わせることで、日経平均株価に近い値動きを目指すポートフォリオを構築するという考え方があります。
これは「擬似インデックス戦略」と呼ばれることもあります。
また、短期的な価格変動を捉えようとするトレードにおいては、ベータ値が相対的に高い銘柄が利用されることがあります。
一例として、過去にベータ値が高く、日経平均株価の動きに対して株価が大きく反応する傾向が見られた銘柄(例:ソフトバンクグループなど、過去のデータに基づく)の動向が注視されることがあります。
さらに、異なる銘柄間の相対的な価格変動を利用するペアトレード戦略などでは、日経平均株価と株価の方向性が比較的安定して連動するとされる銘柄(例:ファナックやダイキン工業など、過去の相関係数が高かったとされる銘柄)が分析対象となることもあります。
各銘柄の特性や市場環境は常に変動します。
投資戦略を検討する際は、ご自身の投資目的、リスク許容度、そして市場の環境などを総合的に考慮し、慎重な判断を行うことが重要です。
日経平均と連動しやすい銘柄にも、注意すべき点があります。
まず、連動性は固定ではなく、市場環境によって変化します。たとえば、企業の決算内容や業績見通しが変われば、個別株の値動きは指数から乖離することがあります。
また、為替や金利の変動、地政学リスクといった外部要因も影響します。
さらに、日経平均の構成ルールそのものも変化しています。2024年には、指数への偏りを是正するため、1銘柄あたりの寄与度に上限が設けられました。 その結果、構成比が高かった銘柄の影響力が一時的に低下するケースもあります。
今後の展望としては、構成銘柄の入れ替えや、成長企業の新規採用もあり得ます。その動きによって、連動性の高い注目銘柄も変化していく可能性があります。
過去の連動実績だけで判断せず、直近の市場動向や構成ルールの変化をふまえて、柔軟に見直す視点が求められます。