大手クレジットカードブランドの中で、パンデミックによる影響を一際大きく受けたのがアメリカン・エキスプレス。通称アメックスだ。
二大ブランドとして圧倒的な地位を誇るVisaやマスターカードとは異なり、アメックスは言わば「第三極」。企業としての歴史は二大ブランドをしのぐが、規模では大きく劣る。会員制を軸にした豊富なサービスを訴求することで独自の地位を保ってきた。
そんなアメックスが、新たな成長プランを公表したのは約一年前。売上・利益ともにパンデミック以前を上回り続けるという、成熟した企業としては野心的な目標を掲げた。
中心に掲げるのは若手消費者だ。今回の記事では、アメリカン・エキスプレスの現在地について紹介しつつ、同社が推し進める成長戦略を解説する。
現在、アメックスのCEOを務めるのはスティーブ・スケリ(Steve Squeri)という人物。1981年よりアクセンチュアで4年を過ごしたが、1985年からは38年アメックス一筋という叩き上げの経営者だ。
2018年にスケリCEOが就任してからの5年は、文字通り波乱の連続だった。コロナ禍では取扱総額がピークから34%もの減少。旅行や出張需要が激減し、同社の収益性にも大きな打撃を与えた。
蓋を開けてみると、取扱総額の急減は一時的なものだった。2021年の終わりには2019年以前の水準を超え、勢いに乗った。このタイミングで宣言したのが、新たな成長プランである。
この成長プランは、「成長のための〇つの戦略」といった類のものではない。むしろ、上場企業としての定量的な財務目標だ。およそ一年前にケスリCEOが語ったところによると、「10%超の売上成長、一株あたり利益は10%台中盤の成長を、2024年とその先も続ける。」
それでは、実際にどのようにしてアメックスはこれまで以上の高い成長率を実現していくのだろうか?