企業の人材教育ニーズに対応!オンライン教育「STUDIO」が急伸する社会人教育の「インソース」
インソース

今回は、企業向けに人材教育サービスを提供する「インソース」についてまとめたいと思います。

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インソースの創業者は舟橋孝之氏。

1964年生まれで、神戸大学経営学部を卒業。

その後、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し、システム部門や個人向け新商品の開発に携わります。

2001年8月には(株)プラザクリエイトに入社し、新規事業の開発に従事。

そして2002年11月に設立したのが「インソース」です。


 銀行員だった舟橋氏がインソースを立ち上げた理由は、「社会人教育」が時代に求められていると感じたから。

様々な業界や職種のビジネスパーソンと接する中で、優秀なビジネスパーソンには共通する「仕事の仕方」「行動」「思考」があることに気づいたそうです。

しかし、これらについて教わる機会はめったにありません。

そういう「発見」をもとに着想したのがインソースの「社会人教育」という事業でした。


過去6年間の業績推移を見てみます。

2012/9期の売上高は14億2862万円でしたが、2017/9期には35億8516万円にまで拡大。

経常利益率は2012/9期の11.27%から、2017/9期には17.0%にまで上昇しており、着実な成長を遂げていることがわかります。


インソースが展開する「社会人教育」とは一体どんな事業なのでしょうか?

今回のエントリでは、インソースの事業について決算数値とともに調べていきたいと思います。



年間1万回を超える研修サービスを企業向けに提供

インソースが展開する「社会人教育事業」は、以下の大きく3つに分類することができます。


① 講師派遣型研修事業

一つは、顧客企業から研修の依頼を受けて、インソースが講師を派遣して研修を行うというサービスです。

法人単位で受注し、研修回数に応じて費用を請求します。

研修プログラムは一部を除いてすべてインソースが独自に開発しており、2017年9月までの1年間で11,000回を上回る研修を実施しています。

② 公開講座事業

二つ目は、インソースのWEBサイト上に掲載された研修プログラムを、受講希望者が個人または法人の単位で申し込むというもの。

最小催行人数を設定した上で、それを上回る応募があれば開催するというモデルで、一人当たりで発生する受講料が収益となります。

東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡などの全国各地で募集しており、2017年9月までの1年で5,000回を超える研修が開催されています。

まとめて購入することで割引を受けられる「人財育成スマートパック」の販売も行なっており、会員サイト「WEBinsource」で残りの受講可能回数を確認できます。


インソースの研修は、「階層別」「テーマ別」「業界業種別」「官公庁・自治体向け」といった分類がなされており、それぞれに多彩な研修内容が用意されています。

口コミによると、若手向けの指導では口角の使い方や発声練習など基礎の基礎から懇切丁寧に指導してくれるとのこと。  

公開講座事業では、元銀行支店長やコンサル出身の方などを採用しており、現場の気持ちを理解した方々がセミナーを開いています。 


③ その他

その他、従業員アンケート機能を搭載した人事サポートシステム「Leaf」や、ストレスチェック支援サービス、営業力強化サービス「Plants」などのサービスも展開。

eラーニングという動画講義もあり、一人当たり月額数百円で100本以上の動画が見放題です。コンテンツはマナーに関する講義から、睡眠マネジメントまであるそうです。

事業ごとの売上高を見てみましょう。

講師派遣型事業の売上が23億7,200万円と最も大きく、全体の7割を占めています。

その他の事業も拡大しており、公開講座は9億円、その他は3億円の売上をあげています。


講師派遣型事業の実施単価は20万円ほどで、前年と比べて5%程度上昇しています。

公開講座の単価は、一人当たり20,900円ほど。


財政状態:とてもキャッシュリッチ

順調に事業を拡大するインソースですが、財政状態についてもチェックしてみます。

総資産は23.4億円あり、そのうち現預金が14億円もあります。かなりキャッシュリッチですね。

これだけの現金をどこから引っ張ってきたのでしょうか?

利益剰余金が11億5917万円も積み上がっています。その他、上場するときなどの株の発行による調達(資本金+資本剰余金)が5億円弱あります。借入金はなし。


キャッシュフローについても見てみます。

営業キャッシュフローが増加し、2017/9期には5億7879万円の現金を稼いでいます。

直近の財務キャッシュフローが大きくマイナスになっているのは、自社株買いに2億2507万円を使ったため。

財務状態は極めて良好と言えます。


株価も見てみましょう。

財務状態が良好なので、株価も上場から大きく伸びています。

時価総額は381億円ほどに達しており、現預金14億円を考慮すると、367億円の評価額となります。

それに対し、5.7億円ほどのフリーキャッシュフローを生み出しており、その64年分の評価額がついていることになります。

市場からの期待はかなり大きいようです。


今後の展望:オンライン教育サービスが急伸

上場から順調に業績を伸ばし、それとともに株価も上昇しているインソースですが、投資家からの期待も高い水準にあります。

今後はどのような展望が描けるでしょうか。


まずは、インソースが行なっている「OFF‐JT(人材教育の外注)」分野のニーズについて考えてみましょう。

これは、2014年に厚生労働省が発表した「競争力の源泉と、競争力をさらに高めるために強化すべきもの」という資料です。


ご覧いただくとわかるように「人材の能力・資質を高める育成体系」を52.9%の企業が重要課題と認識しています。


それに対し、こちらは「近年の管理職に不足している能力・資質」に関する資料です。こちらも厚生労働省によるもの。

上司の後輩指導力を嘆く企業が多いことが伺えます。

社内の人材教育では、「社外教育に任せる」「社内教育力を上げる」の二つの選択肢があります。

そうした社会的背景の中で、インソースの事業ニーズが高まっているというのは確かにうなずける話です。


ただ、市場環境自体は決してそれほど良いわけではありませんでした。

これは、従業員一人当たりの「OFF-JT」費用平均とインソースの売上高の対比です。


2008年9月にリーマンショックがあってから、一人当たりのOFF-JT支出は大きく削られています。

グラフがアレですが、具体的な数字をみると、約半分に削られているようです。

インソースは、環境としては支出が低迷してきたにも関わらず、売上を着実に増やしてきています。


そして、ここ数年は市場環境も改善し、追い風を受けています。

日本社会は今、大きな「人手不足」にあえいでおり、そのために人材関連企業はのきなみ好調です。

そして、全く同じ理由で「人材教育」のニーズも高まっています。

既存の人材教育サービスは10%以上の成長を計画していますが、「その他」事業は2倍以上の成長を計画していました。

ただ、実績としては上半期時点で売上3億円と、前年比で1.5倍の成長となっています。

中でも、一人当たり月額数百円という低コストで利用できる「eラーニング」の伸びはすごいですね。

eラーニングは、2011年に買収した子会社の「ミテモ」で展開しています。


インソースは、「OFF-JT研修の受託」という労働集約的な面が強い会社ではありますが、子会社のミテモを通じてオンライン教育という分野にも乗り出し、かなりの勢いで成長しています。

eラーニングプラットフォーム「STUDiO」が、今後どこまで成長していくのかが見所になりそうです。