介護業界向け展示会「CareTEX」を主催!M&A仲介も展開する新規上場企業「ブティックス」
ブティックス

今回取り上げるのは、介護業界に特化したマッチング・プラットフォームを運営する新規上場企業「ブティックス」です。


日本社会の高齢化が深刻化していることは、誰もが知るところであり、その中で介護業界の注目も高まっています。

ブティックスは2006年の設立で、介護・医療業界に関するM&A仲介など、多様な事業を展開しています。

今回のエントリでは、ブティックスが一体どのような事業を展開しているのか、沿革、そして事業数値について整理してみたいと思います。


ブティックスの歴史

2006年11月、ケアシティ・ホールディングス(株)として設立されました。

代表の新村 祐三氏は、日本最大の国際見本市主催会社「リード エグジビション ジャパン」で、多様なジャンルで展示会開催の総責任者を務めてきた人物。


翌年2月には介護用品のレンタル・販売事業を行うケアシティ(株)の株式を取得。

同年、インターネット通販事業を行うためにケアセレクト(株)も設立しています。


そして、10月には介護靴の専門通販「くつ急便」、12月には車椅子の専門通販「車椅子販売センター」を開始。


2008年になると、シルバーカー・手押し車の専門通販「シルバーカー販売センター」、介護ベッドの専門通販「介護ベッド販売センター」、杖の専門通販「杖・ステッキ販売センター」など、介護に関する通販サイトを次々に開始します。


2009年にはオンライン英語学習の専門サイト「TOEIC学習センター」やベビーベッド・寝具の専門通販「ベビーベッド販売センター」、ルームランナーの専門通販「ルームランナー販売センター」など、事業を多角化。

2011年には保有していたケアシティの株式を、経営陣に譲渡。


2015年には介護用品・高齢者施設向け設備・サービスが集まる商談展示会「第1回 介護用品・介護施設産業展 CareTEX2015」を東京ビッグサイトで開催。

また、介護事業に特化した「介護M&A支援センター」を開設しています。


ブティックスの事業内容を整理

あまりに多様な事業を展開してきたため、ブティックスの事業はパッと見ではよくわからないというのが正直なところです。

介護用品をアピールしている割には、ベビー用品やTOEICなど、やたらと手広く仕掛けています。

現在の事業はどのようになっているのか、改めて整理してみましょう。


まず、ブティックスの事業は大きく「BtoB」「BtoC」の二つに分けられています。

① BtoB(法人向け)事業

BtoB事業では、「商談型展示会事業」と「M&A仲介事業」「Webマッチング事業」が主な事業内容です。

・商談型展示会事業

商談型展示会事業では、商談型展示会事業「CareTEX」を展開。360社の各種サプライヤーが出展し、15,645名の介護事業者が来場。

サプライヤーは出店料金などを支払い、介護事業者は無料で招待されるという仕組みです。

・M&A仲介事業

M&A仲介事業では、介護事業者の事業承継ニーズに特化したM&A仲介サービスを展開しています。

こちらは、成功報酬型での仲介手数料を受け取るモデル。

CareTEXの集客を活用して案件を開拓するとのこと。

・Webマッチング事業

Webマッチング事業では、介護事業者向けの会員制サイト「CareTEXクラウド」を展開。

介護事業者が検討する商品やサービスを検索し、資料請求や取引交渉を行うことができます。

② BtoC事業

BtoC事業では、商材をサプライヤーから仕入れ、一般消費者に販売するという「Eコマース」事業を展開しています。

介護関連などでは、高齢者の顧客も多いため、問合せ電話番号を大きく表示し、販売スタッフが電話で同じ画面をみながら商品探しを行うサポートも提供。

展開している通販サイトは以下の通りです。

介護商品だけでなく、ベビー用品やフィットネス用品も手がけています。


それぞれの事業における売上高を見てみましょう。

意外にも、BtoB事業よりもBtoC事業の方が売上が大きくなっています。

大きく成長しているとは言い難い感じですね。BtoC事業の売上はむしろ減少しています。

全体の業績推移も見ておきます。

売上は2012年度の8億円から、11億円へと増加しており、経常利益率も改善しています。


「介護業界のマッチング」というキーワード自体はとても魅力的だと思ったのですが、その中身を見ると、通販サイト事業の方が大きいというのが現状です。

流れとしては「商談型展示会」を足がかりに、そのほかの事業を展開するという構造になっているとのこと。

展示会を始めたのは2014年と、比較駅最近のことです。

どうやら、ベビー用品やフィットネス用品も売っていたそれまでの事業から、介護業界中心のBtoB事業に軸足を移している真っ最中のようです。

それまで売上の多くを占めていたBtoC事業からは撤退していくのかもしれません。

その辺りを考えると、ブティックスを評価するためには、すでに結果の出ているBtoC事業ではなく、今まさに注力している「展示会」「M&A仲介」の二つを評価しなくてはならないようです。

ブティックスの商談型展示会「CareTEX」は、「決裁者が参加すること」「3拠点で開催していること」「ストック性」の三つを強みとしています。

ただ、イベントを定期開催するからストック型ビジネスだと主張するのは苦しい気がします。

もちろんリピーターはいるでしょうが、むしろ毎年開催するの大変そう。。

M&A仲介サービスについては、売上3億円未満の小規模案件をターゲットとしているとのこと。

確かに、競合は少ないでしょうが、それって儲からないからでは。。。

単価が小さいという課題を解決するには、とにかく数を増やすしかありません。

その案件も展示会で開拓するとのこと。


しかし将来的には、案件の規模も拡大したいようです。

この辺りが矛盾ですね。。事実として、今やっていることと目指しているところにズレがあります。


その他の事業数値

最後に、その他の決算数値についても見てみましょう。

資産の内訳

もしかして、資金繰りがやばいから上場するのかなと思いましたが、むしろめちゃめちゃキャッシュリッチです。

総資産6億円に対して現預金4.5億円。

負債と純資産

資産の出どころ(負債と純資産)を見ると、「前受金」が3億円とかなりの割合に上っています。

展示会における出展料の前受金とのことです。つまり、出店するための前受金を受け取るため、資金繰りには構造的に余裕があるようです。

キャッシュフロー

営業キャッシュフローは9000万円のプラスです。

設備投資はほとんどないため、営業キャッシュフローが丸々フリーキャッシュフロー となるような形になっています。


まとめ

「介護業界のマッチング」というキャッチフレーズを掲げながら、CtoCでのEコマース売上の比率が大きかったりと、ブティックスがこれまでやってきたことと、今後目指している方向性には少しズレがあります。

しかしながら、介護分野が日本で伸びていくことは間違いないことなので、業界で強いポジションをつかむことができれば、大きく成長する可能性はあります。

上場してすぐに119億円という、規模の割には高い時価総額に達したブティックスですが、市場からの期待に応えることができるのでしょうか。

今後もチェックしていきたいと思います。