渋谷の主の東京急行電鉄(東急)を大研究!
東急建設

今回は東京急行電鉄について研究します。

東京急行電鉄は、通称「東急」と呼ばれており、私鉄の中でもトップクラスの売上と輸送人口を誇っているほか、「渋谷の主」という顔も持っています。

渋谷には、「ヒカリエ」を始めとして、「セルリアンタワー」「QFRONT」「109」などは全て東京急行電鉄が運営しています。

また、昨今は渋谷や東急沿線だけでなく、仙台空港の運営権を取得したり、海外にも進出するなどしています。


そもそも東京急行電鉄は、五島慶太氏によって飛躍した鉄道会社です。飛躍したきっかけは、沿線開発と買収でした。

沿線開発では、関西で活躍していた小林一三の手法を見習い、百貨店や娯楽施設などを建設することで沿線価値を高めながら、日吉の土地を慶應義塾大学に無償提供することで、学生の定期という安定収益源を作っていきます。

買収は、やり方がとても強引であったことから、「強盗慶太」と呼ばれることもありました。

五島慶太が買収したものには、鉄道の小田急電鉄・京王電鉄・京浜急行電鉄・東京高速鉄道や映画の東映だけでなく、自動車メーカーの日本内燃機製造、砂糖の東洋精糖などがあり、この時代のことを「大東急」と呼ぶこともあります。

しかし、戦時中に東京高速鉄道が国営化されたほか、戦後の動乱期に小田急電鉄や京王電鉄、京浜急行電鉄がスピンアウトしていきました。


戦後は、五島慶太が公職追放になったもの1951年に解除され、東京急行電鉄に会長として就任するものの、1959年に死去。その後を継いだのが息子の五島昇でした。

五島昇は、父が拡大しすぎた戦線を縮小しつつ、運輸の強化や沿線価値の拡大の方向に注力していきます。しかし、1989年に死去。その後は世襲はなく、現在に至っています。


東京急行電鉄の路線と沿線について

ここでまず、東京急行電鉄の路線と沿線について見て見ます。

この8路線もほとんどが買収や合併によって獲得したものです。

昨今の景気回復によって、都心の地価が上昇傾向にありますが、中でも東京急行電鉄沿線の地価も上昇傾向にあります。

例えば、東横線沿線の中目黒や目黒線沿線の目黒などの都心はもちろんのこと、東横線沿線の武蔵小杉(川崎市)や田園都市線沿線の長津田(横浜市)やあざみ野(横浜市)などの都心から少し離れた場所の地価も上昇しています。


東京急行電鉄沿線は、住みたい街ランキングにも多く入っており、富裕層が多い傾向にあります。

例えば、世帯年収が1000万円以上の世帯が29万世帯おり、課税所得も全国平均の1.5倍、沿線の支出規模は8兆4,477億円を誇っています。



輸送人員は11.6億人と、営業距離が私鉄の中でも長くない中で、他の鉄道会社を圧倒しています。



沿線の年齢層も、年齢を問わず全体的に拡大する傾向があります。



東京急行電鉄の売上構成

ここで、東京急行電鉄の売上構成を見てみます。


他の鉄道グループと比較すると、私鉄の中でも最も運輸比率が低いことがわかります。

これは、他社と比べて多角化が進んでいるということになります。

そして、このグループは、「東急グループ」と呼ばれています。


東急グループの全貌

東京急行電鉄には複数の子会社を抱えており、それらを東急グループ形成しています。

子会社の業種は幅広く、バスなどの運輸や百貨店・スーパーなどの流通、不動産はもちろんのこと、広告代理店やスポーツジム、建設、電力小売、カード、警備、CATV、映画館、介護など生活に密着した形で行なっています。


ただ、「東急グループ」と言っても、大きく2つの中核の会社があります。東京急行電鉄と東急不動産HDです。東京急行電鉄は、東急不動産HDの株式を15.2%保有していますが、東京急行電鉄と東急不動産HDでカニバリズムを起こしている事業がいくつかあります。


まず、REITの運用を見てみます。

東京急行電鉄の子会社に東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメントという子会社が「東急リアル・エステート投資法人」というREITを運用しています。一方で、東急不動産HDの子会社にも東急不動産リート・マネジメントという子会社が「アクティビア・プロパティーズ投資法人」「コンフォリア・レジデンシャル投資法人」「ブローディア・プライベート投資法人」という3つのREITを運用しています。


次に、ホテルを見てみます。

東京急行電鉄の子会社に東急ホテルズがあり、「ザ・キャピトルホテル東急」「セルリアンタワー東急ホテル」「エクセルホテル東急」「東急REIホテル」などのハイクラスホテルやビジネスホテルを運営しています。一方で、東急不動産HDの子会社に東急ステイがあり、「東急ステイ」などの長期滞在を目的としたホテルを運営しています。


次に、マンション開発を見てみます。

東京急行電鉄自身がマンション開発を行なっており、「ドレッセ」「ノイエ」「スタイリオ」ブランドを展開しています。一方で、東急不動産HDは、「ブランズ」ブランドを展開しています。


東急が保有する渋谷の不動産

「渋谷」は、東急が育てたと言っても過言ではないほど、東急グループが様々な土地を保有しています。

以下は、渋谷における東京急行電鉄や東急電鉄REIT、東急不動産、東急不動産REITが保有する不動産と再開発状況です。


1 東急南平台町ビル(東急電鉄REIT)
2 セルリアンタワー(東急電鉄) 
3 東急桜ヶ丘町ビル(東急電鉄REIT)
4 渋谷たくぎんビル(東急電鉄)、渋谷日永ビル(東急電鉄)、渋谷協和ビル(東急電鉄)、藤和宮益坂ビル(東急電鉄)
5 渋谷ヒカリエ(東急電鉄)
6 QFRONT(東急電鉄REIT)
7 道玄坂共同ビル「SHIBUYA109」(東急電鉄)
8 Bunkamura(東急電鉄)、東急百貨店(東急電鉄)
9 東急ハンズ渋谷店(東急不動産)
10 TOKYU REIT渋谷宇多川町スクエア(東急電鉄REIT) 11 東急渋谷駅前「109MEN’S」(東急電鉄)、渋谷住友信託ビル(東急電鉄)
12 渋谷TSKビル(東急電鉄)
13 カレイド渋谷宮益坂(東急電鉄REIT)
14 渋谷マークシティ(東急電鉄)
15 渋谷キャスト(東急電鉄)
16 cocoti(東急電鉄REIT)
17 渋谷東口ビル(東急電鉄)、渋谷二丁目ビル(東急電鉄)、イースト渋谷ビル(東急電鉄)
18 TOKYU REIT渋谷Rビル(東急電鉄REIT)
19 渋谷ストリーム(東急電鉄)
20 渋谷駅街区計画「東急東横店」(東急電鉄など) 
21 渋谷センタープレイス(東急不動産)、渋谷道玄坂東急ビル(東急不動産)、渋谷スクエア(東急不動産)
22 渋谷プレイス(東急不動産)
23 渋谷新南口ビル(東急不動産)、渋谷南東急ビル(東急不動産)
24 A-PLACE渋谷金王(東急不動産REIT)
25 A-FLAG渋谷(東急不動産REIT) 

再開発① 南平台プロジェクト(東急不動産) 
再開発② 道玄坂一丁目駅前地区再開発計画(東急不動産) 
再開発③ 渋谷駅桜丘口地区再開発計画(東急不動産)


注目したいのは、東急不動産が渋谷にあまり不動産を所有せずに東京急行電鉄が沢山保有している一方で、再開発については東急不動産が取り仕切っているということです。


渋谷以外の東京急行電鉄

渋谷以外にも東京急行電鉄は、不動産を保有して運用しています。



今後の東京急行電鉄を支える4つの施策

最後に、今後の東京急行電鉄についてです。

渋谷駅の再開発のうち、東京急行電鉄渋谷駅街区が2019年と2027年に開業する予定で、一旦は終了します。 

ではその後東京急行電鉄はどうするのか。

大きく3つの施策を打っています。


1つ目は、「海外展開」です。

ベトナム(ビンズン)やタイ、オーストラリアにおいて街の開発を行なっています。


2つ目は、「生活密着度の強化・揺り籠から墓場まで」です。

東京急行電鉄は、住宅分譲・賃貸からスーパーなどの小売、CATV・インターネット・電話など、生活費の中でも重要度が高くかつ割合が高くなるものを提供し、それらを東急カードという形で決済まで抑えています。そこに更に、電力が加わることで更に東急依存度が高まっていきます。

また、警備の東急セキュリティや家事代行などのホーム・コンビニエンスの東急ベル、学童保育のキッズベースキャンプなど、今後共働きが増える中で必要になってくるサービスもしっかり提供しています。



更に、東京急行電鉄では、デイサービスの「オハナ」や介護付き有料老人ホームの「東急ウェリナ」などまで手がけています。

要するに、子育てがしやすい環境を作ることで東京急行電鉄沿線に住んでもらい、住んでもらったことをフックに東京急行電鉄沿線で老後の生活まで面倒を見るという「揺り籠から墓場まで」戦略を取っています。

その間の不動産のやりとり(結婚したのでこれまで賃貸だったが住宅を購入したい、子供が大きくなったり増えたので引っ越したい、老人ホームに移るので今住んでいる家を売りたいなど)もグループ内で完結できます。


ここまで生活サービスを提供できているのは、東京急行電鉄だけではないでしょうか。


3つ目は、「相鉄線と東急線の直結」です。

2022年をめどに東急線の日吉駅から相鉄線の西谷駅までが繋がります。


渋谷の主であり、そして私鉄の雄でも東京急行電鉄。

今後の東京急行電鉄もとても楽しみです。