今回焦点をあてたいのは、アメリカのテクノロジー企業「Salesforce.com」と、創業者のマーク・ベニオフ氏です。
「オンプレミス」型から「クラウド」型へのシフトを牽引
多くの人が知っていることですが、エンタープライズ・ソフトウェアの世界では「オンプレ(On-premise)」から「クラウド」へと移行する流れが本格化しています。
「オンプレ」型とは社内のサーバーにソフトウェアをインストールして使う形式のこと。
社内ネットワークだけでシステムを利用することができるため、社外秘の情報を含めた全ての情報を監視することができます。
しかし、社内にサーバーを構築するわけですから初期の導入が大変ですし、その後の運用も大変です。
エンタープライズ向けソフトウェアを開発している企業は、初期の高額な導入費用とその後のメンテナンス(保守)サービスによる継続収益によってお金を稼いでいました。
ところが、これでは「ちょっと試してみる」ということが難しいですし、中小企業の場合にはなかなか導入に踏み出すことができない、という問題があります。
そんな中で出てきたのが「クラウドサービス」という考え方です。
情報社会が進展する中でインターネットが高速になり、サーバーが社内ネットワークになくても十分にシステムを利用できるようになりました。
2010年代になってからというもの、クラウド化の流れは加速し、とどまることを知りません。
今や多くのインターネット企業が自社でサーバーを持っておらず、クラウド上のサーバーを「借りて」サービスを開発しています。(Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformなど)
企業向けシステムでも、多くの会社が「オンプレミス」による提供形態から「クラウド」による定期課金形式へと転換を進めている例は数多く存在します。
そして、この流れを最初に作ったのがSalesforce.comであり、その創業者であるマーク・ベニオフ氏です。
今回のシリーズでは、マーク・ベニオフ氏の半生についてまとめた上で、同社の歴史と初期の成長戦略について掘り下げてみたいと思います。
15歳にして起業、オラクル社では史上最年少VPに
沿革
1999年 | オラクル出身のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏らがサンフランシスコTelegraph Hillにある自宅アパート隣のベッドルーム一室を借りてSalesforceを創業 |
2000年 | CRM『Salesforce.com』をローンチし、「No Software」というスローガンを打ち出す |
2003年 | 年間売上1億ドルを突破 |
2003年 | ユーザーイベント『Dreamforce』を初開催 |
2004年 | 顧客数1万社を突破 |
2004年 | 「Salesforce Ohana」を定める |
2004年6月 | ニューヨーク証券取引所へ株式上場を果たす |
2005年 | 『AppExchange』提供開始 |
2009年 | 『Service Cloud』をリリース |
2009年 | 年間売上10億ドルを突破 |
2010年 | Heroku社を買収 |
2012年 | 顧客数10万社を突破 |
2013年 | ExactTargetを買収し、『Marketing Cloud』をリリース |
2013年 | 『Salesforce1 Platform』をローンチ |
2014年 | 『Trailhead』提供開始 |
2015年 | 新UI「Lightning Experience」を公開 |
2016年 | Demandware社を買収し、『Commerce Cloud』をリリース |
2016年 | Quip社を買収 |
2017年 | AIエンジン『Einstein』をローンチ |
2017年 | 顧客数15万社、年間売上100億ドルを突破 |
2018年 | 『Customer 360』を発表 |
2018年 | MuleSoft社を買収 |
2019年 | Tableau社を買収 |
2019年 | Salesforce.orgを統合 |
2020年 | 「Work.com」ソリューション提供開始 |