2023年01月11日 13:28
雇用と経済の「ねじれ」
U.S. Bureau of Labor Statistics

1月6日、米統計局が最新の雇用統計を発表。昨年12月の非農業部門雇用者数は22.3万人の拡大だった。失業率は3.5%と低下。

雇用を牽引したのは、レジャー・ホスピタリティ業界(+6.7万人)。ここには飲食業(+2.6万人)、アミューズメント施設等(+2.5万人)、宿泊施設(+1万人)が含まれる。

ヘルスケア(+5.5万人)や建設(+2.8万人)、ソーシャルアシスタンス(+2万人)産業がそれに続く。

失業率について、状況は並一通りではない。白人では3.0%(前月比-0.3pt)、アジア系は2.4%(同-0.2pt)に低下した。一方で黒人女性は5.5%(同+0.3pt)、ヒスパニック男性は4.0%(同+0.4pt)と拡大している。

グラフに示したのは、求人あたりの失業者数だ。2008年の金融危機や2020年のコロナ禍では大幅に拡大したが、現在は記録的に低い水準にあることが分かる。

2023年の状況が特異なのは、米国で景気後退懸念が高まっているにも関わらず、失業率が非常に低いことである。

新年早々ニュースを騒がしたAmazonのように、テクノロジー企業による大規模レイオフは目立つ。しかし、非農業部門で働く1.53億人のうち、情報産業に勤める人は306万人。1,605万人の雇用を支えるレジャー・ホスピタリティ産業などと比べ、雇用全体に与える影響は小さい。

現代において、マーケットに与える影響はテクノロジー産業の方が大きい。その結果、雇用と経済の「ねじれ」とも言うべき状況が生まれている。雇用は堅調だが、経済は弱まりつつある。このような局面で、中央銀行はどんな判断を下すのであろうか。