今日はアメリカの巨大な石油会社であるエクソンモービルについて調べてみたい。
エクソンモービルは主に1990年代からリーマンショック前後に至るまで、長いこと米国上場企業の時価総額トップを走ってきた企業であるが、現在はジョンソン&ジョンソンに続いて7位にまで下がっている(今日現在の時価総額は3457億ドル)。
業績推移を見ると、売上・収益性ともに10年前と比べてかなり苦戦していることがわかる。
2011年と2016年を比べると、売上高は4670億ドルから2186億ドル、営業利益は732億ドルから79億ドルへと、坂道を転げ落ちるように減少している。
石油産業は環境による影響をかなり大きく受ける事業であるため、仕方のない部分もあると思うが、エクソンモービルはこの状況をどのように捉え、どう対処していくつもりなのだろうか。
2017年5月31日に開催された株主総会のプレゼンテーション資料では、冒頭から「どんな環境でも成功する位置にある」ときており、だいぶ強気だ。5年間で売上が半減した会社には見えない。
ただ、もちろん会社としては利益を出し続けることこそが重要で、これだけ環境が変化しても赤字を出していない、というのは確かにものすごい。そういう意味での「どんな環境でも成功する」ということか。
成功の柱として、以下の6つを挙げている。
・経済的な強固さ(景気サイクルを通じて柔軟に対応できる資産状態)
・バリューチェーンの統合(よくわからん)
・オペレーションの卓越性(優れた信頼性と規律ある実行力と効果的なリスク管理)
・効率的なコスト構造(コストと資本効率性への容赦ないフォーカス)
・機会でいっぱいのポートフォリオ(質の高い資産、増進する巨大在庫)
・テクノロジー・リーダーシップ(革新と発見により長期価値を推進)
このスライドでは、業界内での相対的な投資リターンの大きさを示している。UpstreamとDownstreamともにROCE(Return on Capital Employed)が競合に比較して高いことをアピール。
参考:石油産業は、原油・天然ガスの探鉱・開発・生産までの段階と、それ以後の精製・輸送・販売その他の段階の二つに大別することができ、前者をアップストリーム、後者をダウンストリームをいう。
エネルギーが生活水準向上に役立っている、とするスライド。一人当たりのエネルギー量が多いほど、国連の「Human Development Index」も高いらしい。
エネルギー生産のあり方が2040年までにどう変わるかの予測。
ソーラー、風力、バイオ燃料などの再生可能エネルギーがだんだんでてくるとの予測。比率的にはあまり変わらない、と予測されているんだな。
気候リスクを和らげているよ、と言うスライド。エネルギーに関わる二酸化炭素排出量は近いうちにピークに達し、やがて現象に転じるだろうとの予測。
40年近くもの間、継続して気候に関する研究を続けてきたらしい。
・世界中で100以上のプロジェクトが進行中
・アップストリームのプロジェクトにおけるコストを30%ほど削減
・ダウンストリーム及び化学プロジェクトにより作り出す現金を30%向上
やはり、大きな成長を期待することができない巨大産業になると、株主へのリターンや社会貢献、研究開発とかのキーワードが増える。しかし、これだけ環境が変わってもまだ赤字に転落することなくリターンを生み続けているのはすごいことである。
結論として、エクソンモービルが目指していると思われるのは
・市場環境がどれだけ変化しても収益性を保つこと
・そのために経済状態、経営の効率性、ポートフォリオ管理、研究開発などを徹底して推進
・巨大産業として重要視される環境面にも配慮
といったところだろうか。これだけの企業になると、成長とかよりも社会的責任の方が重要になってくるのかもなあ、と思った。