マイクロソフトが10月30日、2024年7〜9月期決算を発表。売上高は前年比16%増の656億ドル、営業利益は同じく14%増の306億ドルだった。
サティア・ナデラCEOが強調したのは、やはりAI周辺の事業進捗だ。AIビジネスの売上高は次の四半期、年間100億ドルペースに達する見通し。これは、マイクロソフトの歴史においても史上最速であるという。
現在のマイクロソフトを後押ししているのは、AIだけではない。世界中、大中小さまざまな企業がクラウドへの移行を進めており、大手テクノロジー企業としての恩恵を一身に受けている。
データセンターやエッジ環境、マルチクラウドといった多様な環境を橋渡しする『Azure Arc』は、顧客数3.9万社を超えた。不動産投資信託の運用を行うアメリカン・タワーや、世界最大の化粧品会社であるロレアルなど、各産業に顧客を有し、顧客数は前年比80%以上も拡大した。
クラウドプラットフォーム『Azure』のデータセンターは、世界60以上のリージョン(地域)にまたがる。今四半期はブラジル、イタリア、メキシコ、スウェーデンへの投資を発表。長期での需要シグナルに応じて、キャパシティを広げていることにも言及する。
ChatGPTの開発元であるOpenAIとのパートナーシップについても触れた。OpenAIは10月に66億ドルを調達し、調達後の評価額が1,570億ドルにのぼった。「我々は、価値が大きく膨れ上がっている会社の持分を保有している」とナデラCEOはアピールした。
『Azure OpenAI』の利用はこの半年で倍増した。文法チェックAIの「Grammarly」や、弁護士などプロ層向けのAIアシスタントを提供する「Harvey」などAIネイティブ企業の利用も増大。日立やLGといった伝統的大企業も、アプリケーションを検証から本番運用へと移した。
航空機エンジンのGEエアロスペースは、5.2万人の全従業員にAzure OpenAIによるデジタルアシスタントを用意。わずか三か月にして、社内の利用回数(クエリ)は50万回を超えた。処理した書類は20万件にのぼるという。
直近では最新モデルシリーズ『GPT o1』をサポート。産業特化型のモデルをAzure AI上に持ってくる打ち手も進めている。例えば、医療画像に特化した最高峰のマルチモーダルモデルなどがそうだ。
生成AIは、データ分析の世界にも影響を及ぼしている。シャネルやEY、KPMGなどが利用するのが『Microsoft Fabric』 だ。クラウドをまたがってデータを統合し、分析することができるというソリューションである。有料顧客数は1.6万社を超え、フォーチュン500企業の70%以上が含まれている。