Nubankと言えば、ブラジルを中心としたラテンアメリカで展開する次世代銀行だ。世界最大のデジタル銀行として、Nu Holdingsが2021年に株式上場を果たした。
時価総額は目下170億ドル。IPOして間もないテクノロジー企業としては比較的堅調な評価を保っている。同社は2022年7〜9月期、上場後初めてとなる純利益ベースでの最終黒字を計上した。
それに加えて、売上成長率は前年比169%(現地通貨ベース)と非常に高い。ラテンアメリカとて景気後退は大きな懸念だが、今なお目を見張るような高成長を続けているのである。
今やNu Holdingsは、「ハイパーグロースでありながら黒字」という稀な存在となった。今回の記事では、そんな同社の現在地と、足元で進めている打ち手について紹介する。
まずはNubankの概要について簡単におさらいしよう。創業の地であるブラジルは、金融機関の寡占と非効率が著しい。消費者向けのローン金利は暴力的と言えるほど高く、先進国なら当たり前の金融サービスも、ほとんどの一般層は受けられない。
創業者CEOのダビド・ベレス(David Vélez)は中南米出身。米国スタンフォード大を経てモルガン・スタンレーに入社。名門VCセコイア・キャピタルのパートナー職も渡り歩いたキャリアを持つ。
2013年に創業したNubankは、今や7,040万人(前年比46%増)が利用するデジタル銀行となった。世界的に見ても、これほどの規模で急成長を続ける金融機関はほとんどない。ラテンアメリカでは、すでに利用者数ベースで6番目の存在になった。
Nu社にとっての外部環境は、パンデミックの発生を待たずとも荒波そのものだった。2015年から2016年にかけ、ブラジル経済はGDPが7%も縮小。政治的に不安定な状態が続いてきたことも周知の事実だ。
そんな状況下にも関わらず、Nu Holdingsは急激な売上成長と黒字化を実現した。2022年の後半から現在にかけ、マクロ環境の不透明性は増しているが、ベレスCEOは冷静な態度を崩さない。曰く、「さらなる注意は必要だが、揺るがない長期ポテンシャルを実現する機会も生まれる。」
Nu Holdingsの収入源は大きく二つに分類できる。一つは金利などによる金融収入で、もう一つは手数料収入だ。かつては手数料収入の方が大きい局面もあったが、直近では金利収入の伸びが著しい。