“卸売の商習慣を刷新する”BtoBコマース支援の「goooods」の事業モデルとは

ShopifyやBASEといったECサイトの構築サービスが台頭し、個人がブランドを運営しやすい環境が整ってきた。ただ、スモールブランドのB2B(卸売)取引には課題が多く、それらの解決を目指すのがスタートアップのgoooods(グッズ、東京都渋谷区)だ。

同社は、連続起業家の菅野圭介CEOらが2021年に立ち上げた。菅野氏はGoogleの日本法人出身で、2014年にスマートフォン向けの動画広告プラットフォームを配信する「ファイブ」を創業。2017年にLINEに約70億円でファイブを売却し、新たな挑戦として卸売の領域に飛び込んだ。

同社の運営するBtoBコマースプラットフォーム「goooods」は、ブランドが抱える取引先開拓や与信管理などをサポートするサービスだ。展示会とECサイトの役割を兼ねており、バイヤーとブランドを引き合わせプラットホーム上で受発注ができる。

ブランドとバイヤーの間に生まれる「与信」の課題は、独自の返品制度や後払いの仕組みにより解消。今後は取引データを蓄積し、機械学習技術により返品率や未払い率を予測していく。

テクノロジーにより信用を補完し、前払いや返品不可といった卸売業界の「商習慣の刷新」を目指す。 同社の足元の状況や今後の展望について、菅野CEOに聞いた。

卸売に着目、きっかけは妻の抱える課題

【略歴】かんの・けいすけ 早稲田大学商学部卒業後、08年にGoogle 入社。 AdMob や YouTube のプロダクトマーケティングなどを担当。14年にスマートフォン動画広告プラットフォームを開発する「ファイブ」創業。17年にLINEによる M&Aで同社グループ入りし、21年までカンパニーエグゼクティブとして広告事業を管掌。21年10月にgoooodsを共同創業。

ーーなぜBtoBコマース(卸売)に着目したのでしょうか。

妻はハーブティーのD2Cブランドを運営しているのだが、彼女が抱える課題がきっかけとなった。原材料のハーブを調達する際、工場に対してある程度のロットを発注しないと原価も上がるうえ、そもそも相手にしてもらえない。

なかなか捌ききれず大量の在庫が自宅に積み上がり、子供部屋を半分以上も占めるような状況だった。

運良くとあるホットヨガの専門チェーンから大規模な注文があったことで、なんとか在庫を解消することができた。この時、小さなブランドにとってtoBの卸先が決まった際のインパクトがどれほど大きいかを痛感した。

個人でブランドを運営しやすい世の中になり、妻と同様の悩みを抱える人は世界中で増えている。チャンスは大きいと判断し卸売領域でのビジネス展開を決めた。

toBの販路開拓では、展示会への出品や問屋経由で小売店を紹介してもらうことがメインになる。有効な手法ではあるが、費用やマージンの負担が重く活用できる人は限られる。

世の中では名刺交換から始まる偶発的な取引が、一対一で無数に行われている。これをN対Nにして構造化したときに何が起きるのかを想像したことが、現在のビジネスにつながるインスピレーションとなった。

ーー卸売の現状を教えてください。

D2Cブランドは営業リソースやマーケティングノウハウが不足していることも多く、取引先の開拓が構造化されていない。

また、目の前の取引先候補が信用できるかわからず、支払いや資金の回収、ブランドイメージの毀損リスクといった「信用の壁」が発生してしまう。これが、すでに商習慣化されている前払いや在庫の買い取り仕入れ、返品不可など保守的な取引条件につながっている。

現在はインフルエンサーなどが自分のショップを持つことも増え、バイヤー層はより個々化・多層化している。ただ、これまでの仕組みでは信用が創出されず、新しいタイプのバイヤーが取引しにくい状況となっている。

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