コロナ禍を契機に急速に広がったオンラインでの医療サービス提供。そんな中で着実に成長を続けているのがスタートアップのPharmaX(東京都新宿区)だ。
医師でもある代表取締役の辻裕介氏と、エンジニアで取締役の上野彰大氏が2018年に創業。主力事業としてオンライン薬局「YOJO」を展開する。LINEを通じて薬剤師が体質に合った漢方などを提案し、購入から配送、アフターフォローまでがオンラインで完結するサービスとなっている。
2021年に保険薬局の指定を受け、オンライン服薬指導による処方薬領域へ参入。リモート薬剤師の積極活用やCRM(顧客管理)ツールの自社開発などに取り組み、患者の医療体験の向上と薬剤師の働き方改善を同時に進めていることも特徴の一つだ。
9月にはKDDIとの協働についても明らかにしている。パートナーとの連携も広げながら、テクノロジーを活用した「なめらかな医療体験」の提供を目指している。
同社の足元の状況や今後の展望について辻代表に聞いた。
【略歴】つじ・ゆうすけ 2012年順天堂大学医学部卒業。ヘルスケアスタートアップでインターンとして事業開発を経験し、順天堂医院にて臨床と研究に従事。2018年12月MINX創業。2022年8月PharmaXへ社名変更。
ーー創業までの経緯を教えてください。
前職で大学病院に医者として勤務していた。大学病院での業務は多忙で、目の前の患者さんに心身共に寄り添うことができない状況に葛藤を感じていた。
ただ、大学病院の中から働き方や患者さんに対するスタンスを変えていくのはかなり難しく、ゼロから医療機関を立ち上げて「患者主体の医療体験」を作りたいと考え、創業に至った。
当初は、IT技術を実装した次世代クリニックの運営を目指していた。物件や院長先生も見つけ、融資が下りる直前ぐらいまでフェーズは進んだものの、展開を断念した。
クリニックは医療法人のためビジネスとしてスケールする難易度が高く、自分で開業することもできる医者に対して、根本的な付加価値を提供することも難しい。
「医療体験を根本から変えていく」ところまでは到達し得ないと痛感し、事業の方向性を再検討している中で、次のモデルとして薬局にたどり着いた。
ーー御社が提供を目指す医療体験はどのようなものですか。
「なめらかな医療体験」の提供を目指している。全ての医療体験がオンライン上でつながり、スムーズに完結するようなイメージだ。薬局領域はその第一弾という位置付けになる。
現状では医療を提供する側のクリニックや薬局、大病院などが全く連携できてない。 利用者との医療機関の関係も「点と点」になっており患者さんの動線も複雑で、診察や服薬指導、薬の受け取りまで全てにタイムラグがある。ここをできるだけなくしていくことが一つ大きなポイントになる。