企業価値35億ドル(評価時点で約4500億円)の仏ユニコーン企業、Mirakl(ミラクル)が今春から日本に進出した。すでに約40カ国で事業展開し、拠点では15カ国目になる。
世界5000社以上のサード・パーティー・セラー(メーカーなど販売事業者)と、自社ECの運営企業をつなぐプラットフォームを提供。欧米を中心に総合小売りやアパレルなど300社以上の顧客を抱える。
企業はブランドや需要に合致する商品だけをECに補強できる。データを独占するAmazon.comなどの総合EC、販売ジャンルが限られる単独のEC運営に続く第3の選択肢として、日本でも地位の確立を目指す。
前回の記事に続いて、4月に日本法人社長に就任した佐藤恭平氏が語る特色や日本での事業戦略をインタビュー形式で紹介する。
ーーひとことで言えば、ミラクルはどんな会社ですか?
「マーケットプレイスというカテゴリーを作った会社」との自負がある。共同CEOのPhilippe CorrotとAdrien Nussenbaumが、街中のゲームショップにある商品をバーチャルに集め、販売しようと起業したのが始まりだ。
前身は2005年に設立され、仏小売り大手Fnac(フナック)が3年後に買収した。アマゾンの攻勢が強まり、「第三者のセラーと一緒にECを作り、品ぞろえで対抗したい」と。実際、2人のプラットフォームで商品はぐんと増えた。
だからマーケットプレイスがどういう存在で、どうすればうまくいくのか理解している。実績を上げて2人はスピンアウトし、ミラクルを創業した。
Mirakl日本法人の佐藤恭平社長=Strainer
【経歴】さとう・きょうへい 慶應義塾大総合政策学部卒、同大経営学修士(MBA)。1998年SAPジャパン入社、EC事業の立ち上げに従事。ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタント、日本マイクロソフト業務執行役員を経て、SAPに再入社。4月から現職
ーーどんな企業に利用されていますか?
流通、小売り系が非常に多い。Kroger(クローガー)、Carrefour(カルフール)、Macy’s(メイシーズ)、Best Buy Canada(ベストバイカナダ)などが顧客になっている。
アマゾンにどーんと攻められ、オンラインで立ち向かうためのツールとして使われるようになった。BtoCで始めたが、現在はAirbus HelicoptersなどBtoBも増えてきた。
ーービジネスモデルの強みを教えてください。
アマゾンや楽天市場のような大手ECでは、商品にたどり着いてもらうまでが大変だ。一方で自社ECでは商材が限られ、消費者の需要が満たしにくい。極端に言えば、(商品が)何でもあるか、何もないかの2択になる。
ミラクルは「自社でマーケットプレイスを作りましょう」というサービス。企業が世界観や価値観に近いセラーを巻き込める。例えば品質重視の百貨店なら、輸送や保管の方法にもこだわるワインメーカーだけを選んで掲載できる。
ブランドを中心に据えながら、(セラーと消費者をつなぐ)プラットフォームビジネスができるのは大きな魅力だ。消費者には、セラーの商品もそのECの運営企業がそろえるラインアップとして、サイト上に同じように掲載される。