『cowcamo』事業の売上総利益が倍増「ツクルバ」1Q決算まとめ
ツクルバ

リノベーション物件のプラットフォーム『cowcamo』を展開する「ツクルバ」が12月13日、1Q決算を発表しました。

1Qの売上高は4.5億円。一見すると前年比+8%の拡大にとどまっていますが、これは前年1Qに一時的な高額仕入れ取引が発生したため。

ツクルバが成長指標として掲げている「売上総利益」は、3.7億円。前年比+91%と大幅に拡大しています。

営業利益は2,400万円となり、前年の△5,200万円から黒字転換を果たしました。経常利益、純利益についても黒字化を果たしています。

この1年で売上総利益が2倍近くに拡大したツクルバ。決算資料をみると、非常に多くの数値が公開されています。足元の数値がどのように拡大しているかを中心に、一つずつ整理してみましょう。

カウカモ事業の売上総利益が倍増

ツクルバには『cowcamo(カウカモ)』事業のほかに「シェアードワークプレイス」事業がありますが、現在、売上の大半はカウカモ事業。

1Qの売上4.5億円のうち、カウカモ事業は3.9億円。実に85%を占めています。

カウカモはマーケットプレイスですから、GMV(流通総額)に対して受け取る売買仲介手数料が主な売上となります。

そのため、トップラインを決めるのはGMVの拡大。足元を見ると、1QのGMVは58億円と、前年から+120%もの拡大です。

それに対して、売上は3.86億円。前述した通り、前年同期の仕入れ物件があったため前年比は+6%の増加になっていますが、売上総利益は3.44億円と、前年比+97%。ほぼ2倍に拡大しています。

売上総利益の拡大は、その多くがカウカモのセグメント利益拡大につながっています。その金額は1.4億円と、前年同期から4倍近い増益となりました。

カウカモMAUは+79.7%

上で確認した通り、カウカモ事業のトップラインは大きく伸びています。この成長を支えるのが、買い手となる一般ユーザーの拡大です。

累計会員数は12.4万人に達し、前年同期から+79.7%もの拡大。1ヶ月あたりに訪れるMAU(月間アクティブユーザー)は3.6万人で、同じく44%もの増加となりました。

ちなみにMAUについては、算出方法を少し変更しています。これまでアプリとウェブサイトに来訪した会員MAUを単純に合計していましたが、より正確な開示を行うためにユニーク化。

1Q時点で行われた取引件数は、約120件と開示されています。GMVが約58億円ですから、1件あたりの単価はざっくり4,833万円ということに。

カウカモは、「売り主」と「買い主」をつなぐマーケットプレイスですから、買い手ユーザーのMAUが増えるほど、さらに売り主を呼び込むという好循環が期待できます。

スター・マイカグループとの提携

このような流れの中でツクルバは今回、興味深い発表を行いました。それが、不動産会社「スター・マイカグループ」との提携です。

スター・マイカは、2001年創業の不動産企業。創業者の水永政志氏は三井物産→UCLAのMBA取得→ボスコン→ゴールドマンと渡り歩いた人物。

中古マンション、その中でも買い手が限定される「賃貸中マンション」に着目して購入し、入居者が退去するまで保有。退去したら、リノベーションを行なってバリューアップしてから販売というビジネスが中心です。

売上の63%はこの「リノベ販売」で、上スライドを見ればお分かりのように、売上・利益ともに着実に拡大しています。年間に取得する流通用物件は約1,500戸

ツクルバと連携して複数のリノベーションパターンを開発し、スター・マイカグループが取得した施工前物件と掛け合わせることで、ユーザーが施工前物件に対して自らリノベーションパッケージを選択できるようにするとのこと。

「住宅の高齢化」がリノベ推進の原動力

ツクルバのカウカモ事業は、買い手と売り手が存在する、いわゆるツーサイド型マーケットプレイス。買い手が増えれば売り手が増え、魅力的な物件が増えれば、買い手も増えるといった好循環を起こすことが重要。

マーケットプレイスならではのネットワーク効果が働くのはもちろん、そもそも独自の世界観を形成しているユニークなプラットフォームですから、模倣することは難しそう。

そうすると、気になるのは「どこまで伸びるのか」というアップサイドです。この点について、最後に軽くおさらいしておきましょう。

まず、市場全体を大きく捉えると、カウカモ事業は「中古住宅流通市場」に含まれます。首都圏だけでも2018年時点で約1.6兆円の市場があり、2013年からの5年で1.3倍に拡大しています。

中古住宅の流通促進は、日本政府も重要課題として掲げており、2025年までに全国で8兆円に倍増させることを目指しています(未来投資戦略2017)。

ツクルバの推計によると、リノベーション住宅の潜在市場規模は8,000億円ほど(2025年)。2010年時点では5,000億円程度とも推計しています。

リノベ市場の拡大を推し進める要因としてまず挙げられるのが、「住宅ストックの高齢化」です。住宅が古くなっているので、再利用するならリノベーションがますます必要というわけです。

ユーザー数で考えても大きな拡大余地があるようで、都区部のターゲット人口150万人のうち、中古住宅の検討をしているのが40万人程度。さらに首都圏全体に広げれば、ターゲット人口が440万人、検討者数が100万人いるそうです。

それに対して、現状のMAUは3.6万人。まだまだ拡大余地はありそう。

「足元の急成長」「ユニークなポジショニング」「巨大な市場ポテンシャル」と三拍子揃っているツクルバですが、市場からの評価は厳しいもの。

直近の時価総額は132億円ほど。四半期の売上総利益が3.7億円ですから、年間15億円ペースとして、その9倍程度の評価額です。

やはり重要なのは、足元の急成長がどこまで続くか。ツクルバに対する市場の評価がどう変わっていくか、今後も注目したいと思います。