ソーシャルゲーム会社として国内大手のグリーの決算が出ました。売上は前年同期比でプラス45%と大きく増加しています。
2017年1Qには149億円の売上だったのが、2018年1Qには216億円と、67億円も売上が増加しています。
営業利益も26.9億円と、前四半期の24.1億円から5.9%の増加。
売上は大きく成長したものの、営業利益はわずかな増加に止まっています。その変化の中身はどうなっているのでしょうか?それをみていきたいと思います。
四半期決算短信にはほとんど情報がなかったので、決算説明資料の情報を整理していきます。
まずはコスト構造を前年同期と比べてみます。
大きく変わったのは広告宣伝費で、6.3億円から23.3億円へと、17億円も増大しています。
また、支払い手数料なども34.1億円から75.6億円へと大きく増加していますが、これは売上高に応じて否応なく増加する費用だと思われます。
売上高に対する比率がどのようになっているかをグラフにしてみます。
人件費は海外拠点の閉鎖などにより、売上に対して25%から15%へと、大きく比率が減少しています。
やはり一番大きく増えているのは支払手数料で、23%から35%と尋常でなく増加しています。
広告宣伝費は4%から11%ほどに増えていますが、それほどとんでもなく大きいというレベルではありません。
支払手数料が売上の増大以上に増えているのが、営業利益率が低下した直接的な要因と言えます。
次に、グリーの収益の増加要因を調べたいと思いますが、その前に同社がどんな事業を展開しているのかを詳しく知っておく必要があります。
グリーの主力事業はゲーム・エンタメ事業ですが、それはさらに2つに分かれます。
一つは、ガラケー時代から一貫して運営している「ウェブゲーム(PF・運営等)」で、今でもグリーの安定収益として事業を運営しています。
もう一つは、競争激しい「ネイティブ」ゲーム領域で、この領域に対してグリーは「エンジン」「IP」「グローバル」という3つのアプローチを掛け合わせて勝負しようとしています。
主力のゲーム事業以外に、広告・メディア事業にも注力しており、そこでは「アプリ」「オリジナル動画」「継続投資」という3ポイントを軸として事業を展開しています。
ネイティブゲーム事業は極めて順調のようです。前年同期には46億コイン消費されていたのが、今四半期には126億コインと、3倍近くにまで増大しています。
「シノアリス」「アナザーエデン」などのヒットタイトルが成長を牽引しているとのこと。
グリーとしてはヒット作を海外展開にまで繋げてロングヒットにしていきたい考えのようです。
グリーのゲーム事業のうち、成長しているのはやはりネイティブゲームのみで、昔ながらのウェブゲームは衰退の一途を辿っています。
上左のグラフを見ると、ネイティブゲームのコイン消費が2倍以上(前年同期比)に増えている一方、ウェブゲームは30%ほど減少しています。
比率でみてみます。
1年前はネイティブゲームの比率は33%に過ぎませんでしたが、直近では60%と逆転しています。
続いて、広告・メディア事業です。グリーはメディア事業として暮らしに関する情報サイト「LIMIA」を展開しています。
「DIY・ハンドメイド・インテリア・グルメ・リフォームなど、暮らし情報が毎日集まる住まいプラットフォームで、誰でも暮らしのアイデアを投稿することができ、100均のお買い得情報からレシピまで、住まいのアイデアが満載」とのこと。
また、インフルエンサーキャスティングや動画制作なども手掛ける子会社の3ミニッツから、「MINE BY 3M」というメディアも展開しています。こちらは、ファッションをもっと楽しみたい大人の女性に贈る『ファッション動画マガジン』で、ファッションやコーディネート、メイクなどに関する情報を発信しています。
メディア事業の進捗は前”四半期”比でPVが2.4倍と、大きく成長しているようです。
最後に、グリーの従業員1424名がどのように配置されているかをみます。
グラフにしてみます。
やはりゲームの比率が大きいですが、広告・メディア事業にも全体の18%以上の人員を割いていることがわかります。
タイトルに対する答えは次のようになります。
・ネイティブゲーム事業のヒットタイトルにより売上が大きく増加
・ネイティブゲームへの依存度が強まったために支払手数料などのコストが増大(AppStoreへの手数料など)=> 利益率が低下
その他注目すべき点はやはり既存のウェブゲーム事業が縮小していることで、グリーは今後、継続してネイティブゲームでのヒットを出し続ける必要性が今まで以上に強くなります。
それができるのかどうか、今後もチェックしていきたいと思います。