中国のエンタメ企業「Bilibili」(ティッカーシンボル: BILI)の2018年3Q決算が発表されました。
彼らは「中国版ニコニコ動画」とも呼ばれる動画配信サービスを提供しており、近年ではゲーム事業が成長を牽引してきました。
今四半期の売上は10.8億元(175億円)と右肩上がり、反対に営業損失は2.6億元(42億円)まで拡大しています。
対前年の売上成長率は50%近い水準をキープしており、引き続き猛烈な成長を続けています。
これまでBilibiliの躍進を支えてきたのはゲーム事業でした。
2016年9月に提供を開始した『Fate/Grand Order』(TYPE-MOON社)等が爆発的にヒットし、売上が急増。
しかし、今四半期の売上は7.4億元(120億円)と前四半期から減収してしまっています。
それでもBilibiliが高い成長率を維持できているのは"本業"ともいえる「ライブ配信」が急速に伸びているためです。
ライブ配信の売上成長スピードがグイグイと加速しており、今四半期は292%に達しています。
ライブ配信と広告収益の売上構成比が再び上昇しており、少しずつゲーム依存からの脱却を進めていることがわかります。
Bilibiliの成長を支えるユーザー数はどれほどいるのでしょうか。
月間アクティブユーザー数(MAU)は右肩上がりに増加し、9,270万人まで拡大しています。
さらに驚異的なのは課金ユーザーの獲得ペースです。
2018年1月にライブ配信サービスのプレミア会員プランを開始したことで、有料会員数が急増。
今四半期末の課金ユーザー数は350万人で、3か月ごとに50万人のペースで増加しています。
MAUにユーザー課金率は3.8%に上昇しました。
ゲーム収益及びライブ配信収益に対する課金ユーザーあたりの顧客単価(ARPPU)は870元(1.4万円)で、1か月あたりに換算すると約4,600円ほど。
ユーザーの母数拡大がBilibiliの成長ドライバーとなっていることがわかります。
彼らはユーザー獲得のためにコンテンツ投資を強化しており、中でもプロクリエイター制作動画(PUGV = professional user generated videos)に注力しています。
(Bilibili)
動画視聴の89%をプロクリエイターによって制作された「PUGV」が占めており、「ハイクオリティなコンテンツを配信し続ける」ことが成長の鍵を握っています。
クリエイター数は前年から130%増の57.4万人に拡大。
それに伴ってコンテンツ数も171.6万本まで増加し、結果としてクリエイターをフォローしている高ロイヤリティなファンの数が大幅にベースアップしました。
ユーザーの1日あたり平均利用時間(ゲームを除く)は前四半期の75分から3か月で10分伸びて85分になったとのこと。
12か月間のユーザー維持率(リテンションレート)は80%で推移しており、コンテンツ強化の効果が表れているといえます。
Bilibiliのコスト構造は2年前と比較して大幅に改善しています。
売上原価率は82.0%、販管費率は42.1%まで低下しました。
直近のトレンドを詳しく追いかけてみましょう。
クリエイターへの報酬支払などを含むレベニューシェアが41.0%と上昇傾向にあります。
また、コンテンツ費用も2ポイントほど上昇しました。
2016年3Qおよび4Qに一般管理費が増加しているのは、ゲーム事業の売上急増によって役員報酬が拡大したためです。
2018年以降に販促費率が上昇傾向にあり、現在は18.3%となっています。
バランスシートもチェックしていきます。
総資産76.4億元(1,244億円)に対して現金同等物が28.7億元(467億円)、投資有価証券が16.2億元(264億円)と約60%を占めています。
資産の調達原資を見てみると、株主資本が50.5億元(822億円)で最も大きくなっています。
株価の推移を見てみましょう。
8月以降に株価が少しずつ上昇しており、現在の時価総額は37.9億ドルです。
キャッシュ44.9億元(6.5億ドル)を考慮した企業価値(EV)は31.4億ドル。
9か月間の累計売上高29.7億元から年間額を39.6億元(5.7億ドル)と仮定した場合5.5倍という評価を受けている計算となります。
コンテンツ強化に注力するBilibiliは、株主であるテンセントとの提携をさらに強化することを発表しました。
約3.2億ドルの追加出資を受け、テンセントの持株比率は12%に。
今後はアニメコンテンツに対して共同で投資していく計画で、「Gen Z」(1990年〜2009年生まれ)ユーザーのさらなる獲得を目指します。
そして、10月末には「グリー」とのパートナーシップ契約締結も発表しています。
Bilibiliはコンテンツ開発力を有するグリーと合弁で「bGゲームス」を設立し、ゲーム開発・運営を強化していきます。
また、グリーが新たな事業の柱として積極投資している「VTuber」事業でも協業し、お互いのプラットフォームを活用してコンテンツ配信を行なう予定。
特定のヒット作依存から脱却を図っている両社の提携がどのように発展していくのか、今後の動向も引き続きチェックしていきたいと思います。