ソーシャルゲーム事業を展開する「アカツキ」の2019年3月期2Q決算が発表されました。
2Q売上高は74億円に達し、1Qの減収基調から回復。
前年同期比で27.5%の増収を達成しています。
営業利益も大幅な増益で39億円。
前四半期比だと178%、前年同期の28億円からは39%の増益となっています。
アカツキの株価は、2017年8月から下がる一方でしたが、今回の決算を受けて15%以上も値上がりしています。
いったい何があったのでしょうか。決算の内容を掘り下げていきたいと思います。
アカツキのメイン事業であるゲーム事業では、主軸タイトルである「ドラゴンボールZドッカンバトル」が引き続き牽引しています。
全世界2.5億ダウンロードを突破したということで開始したキャンペーンが功を奏したとのこと。
KinKi Kidsを起用したテレビCMも展開し、さまざまなイベントを展開。
このキャンペーンは国内だけでなく海外でも展開しており、Redditにも特設ページ的なものを発見しました(公式との関係は不明)。
その結果、海外事業も大幅に売上・利益が伸長。
(決算説明資料)
アカツキの中核事業はあくまでもゲーム事業です。
全体の売上74億円のうち、ゲーム事業が70億円と大部分を占めていますが、一方で非ゲーム事業の四半期売上も3.9億円と、かなり伸びています。
アカツキの非ゲーム事業は、リアルな感動体験を提供する「ライブエクスペリエンス(LX)事業」です。
LX事業では、人気バンド「SEKAI NO OWARI」とコラボした「リアル脱出ゲーム」を展開。
体験者の90%から高評価を獲得するなど、大盛況に終わったようです。
「美しすぎるお化け屋敷」をキャッチコピーにした「The Witch」というホラーイベントも横浜大世界アートリックミュージアムにて開催。
全国各地のレジャー・アクティビティを検索できる「SOTOASOBI」も好調で、自然災害が多かったにも関わらず、前年から1.3倍の売上を残したとのこと。
その一方、リアルイベントの検索サービス「Wowful(ワオフル)」はサービスを終了しています。
今後は「ゲーム」「ライブエクスペリエンス」に加え、それらの融合領域である「次世代エクスペリエンス」としてeスポーツ分野への投資を行うとのこと。
実際に、スペインのPEL社(Professional eSports League)を買収してプロリーグ「LPE」を設立するなど、具体的なアクションにも取り組んでいます。
アカツキがプロリーグ設立でe-sports業界に参入、FCバルセロナや東京ヴェルディなど参加
eスポーツはこれから年平均35.2%の成長を続けると言われ、2022年には市場規模3,300億円にも達するそうです。
中でも人気なのはアメリカ、韓国、中国などで、中国ネット企業「テンセント」もeスポーツ分野で大きな存在になっています。
「LPE(League of Professional esports)」では、サッカーやバスケ、アメフトなど複数種目のプロスポーツチームが参加。
プロスポーツチームの既存ファンを狙ってゲームリーグを展開することになります。
LPEは子会社のPEL社が主催・運営することになり、ビデオプラットフォームメディアからの放映権料やファン・視聴者からの物販・チケット代、ゲームパブリッシャーへのパブリッシャーフィーなどが収益になります。
バランスシートを見ると、現預金が203億円積み上がっています。
借入金が71億円あるので、いわゆるネットキャッシュは132億円。
キャッシュフローの状況をみると、事業で稼いだキャッシュ(営業CF)はこの半年で16億5,600万円あります。
前年同時期の28億4,500万円と比べると減少していますが、その原因は法人税の支払いのようです。
ここでもう一度アカツキの株価をみると、時価総額は715億円です。
ネットキャッシュが132億円あるのでそれを引くと、企業価値(EV)は583億円。
年間に50億円のキャッシュフローを生み続けるとすると、12年で元を取れる水準です。
ヒットの不確定性から時価総額が上がりにくいスマホゲーム業界ですが、アカツキは「リアルエンタメ」「eスポーツ」という二軸で次の展開を狙っています。
「ドラゴンボール」という最強のIPを使いながらロングヒットを生み、そこで稼いだキャッシュを次のテーマに投資する。
アカツキの「種まき」が花開くことになるのか、今後もチェックしていきたいと思います。