今回焦点をあてたいのは、アメリカのテクノロジー企業「Salesforce.com」と、創業者のマーク・ベニオフ氏です。
多くの人が知っていることですが、エンタープライズ・ソフトウェアの世界では「オンプレ(On-premise)」から「クラウド」へと移行する流れが本格化しています。
「オンプレ」型とは社内のサーバーにソフトウェアをインストールして使う形式のこと。
社内ネットワークだけでシステムを利用することができるため、社外秘の情報を含めた全ての情報を監視することができます。
しかし、社内にサーバーを構築するわけですから初期の導入が大変ですし、その後の運用も大変です。
エンタープライズ向けソフトウェアを開発している企業は、初期の高額な導入費用とその後のメンテナンス(保守)サービスによる継続収益によってお金を稼いでいました。
ところが、これでは「ちょっと試してみる」ということが難しいですし、中小企業の場合にはなかなか導入に踏み出すことができない、という問題があります。
そんな中で出てきたのが「クラウドサービス」という考え方です。
情報社会が進展する中でインターネットが高速になり、サーバーが社内ネットワークになくても十分にシステムを利用できるようになりました。
2010年代になってからというもの、クラウド化の流れは加速し、とどまることを知りません。
今や多くのインターネット企業が自社でサーバーを持っておらず、クラウド上のサーバーを「借りて」サービスを開発しています。(Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformなど)
企業向けシステムでも、多くの会社が「オンプレミス」による提供形態から「クラウド」による定期課金形式へと転換を進めている例は数多く存在します。
そして、この流れを最初に作ったのがSalesforce.comであり、その創業者であるマーク・ベニオフ氏です。
今回のシリーズでは、マーク・ベニオフ氏の半生についてまとめた上で、同社の歴史と初期の成長戦略について掘り下げてみたいと思います。