ソフトバンクグループの巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が今年の5月にクロージングされたことは記憶に新しいところです。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の初回クロージング完了に関するお知らせ
この初回クロージングでは930億ドル以上(10.4兆円)を超える出資コミットメントを取得したとありましたが、それから半年も経たないうちにものすごい勢いで投資しまくっています。
SoftBank is plowing billions into tech companies: Here's a list of investments so far
上の記事では、ソフトバンク及びビジョン・ファンドが過去に投資した、あるいは検討している企業とそれぞれの投資額について書いてあります。
UberやARM、WeWorkについてはご存知の方も多いと思いますが、他の会社はあまり馴染みがない企業も多くあります。
以前、孫正義氏は「自分は10年以上先を見据えて投資しているから、なかなか理解されない」的なことを言っていました。
これが本当なら、ソフトバンクの投資先を見ることで、10年先の世界がどうなっているのかを垣間見ることができるかもしれません。
なので、本エントリでは各社の背景や事業内容についてチェックしていきたいと思います。
Uberはおそらくほとんどの方がご存知の配車アプリです。
2008年に雪の降る夜のパリにいた時、トラビス・カラニックとガレット・キャンプの二人はタクシーを捕まえることができませんでした。
そこで、二人は「タップするだけでタクシーに乗れるアプリがあれば」というシンプルなアイデアを思いつきます。
Uberはハイエンドの黒い車を都市部で配車するサービスから始まり、現在は世界の多くの街に広がりました。
現在は配車だけでなく食事のデリバリーを行う「Uber Eats」なども展開。事業領域を広げています。
Softbankによる出資は、既存投資家からの株式買取と新規株式発行への投資の両方で行われるとのことですが、既存投資家のBenchmark Capitalが反対しているなど、どうなるか見ものです。
ARMはCPUのアーキテクチャをライセンシングしている企業で、IoT時代の土台となる技術を持っていると言われています。
ARMは昨年に320億ドルものお金をかけてソフトバンク本体が買収しています。
しかし、そのうちのおよそ25%にあたる82億ドルがソフトバンク本体から売りに出され、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが買い取るということになっているようです。
WeWorkは未来型・シェアオフィスを展開している企業です。
2010年に創業し、美しかったり共有される”だけ”ではないそれ以上のもの、すなわち”コミュニティ”を作り出したかったそうです。
小さなガラス張りの小部屋を一席から借りることができ、超高速インターネットや会議室、プリンタなどのオフィス設備からコーヒー、クラフトビールに至るまで様々なアメニティが提供されています。
個人的にもニューヨークで一ヶ月ほど利用したことがありますが、極めて快適でした。
日本でもアークヒルズでオープン予定。
OneWebは2012年に設立された企業。
全人類のうち、まだインターネットを利用することができない人が半分もいることを解決し、デジタル格差を2027年までになくすことを目標とするベンチャー企業です。
いかにも孫正義氏が好きそうな壮大な目標に向かっていますが、ソフトバンクだけでなくクアルコム、エアバス、コカコーラ、ヴァージンなどの大企業も出資しているそうです。
その壮大な目標は人工衛星によって成し遂げられる予定とのこと。
代表のグレッグ・ワイラー氏は2007年にO3b Networksという会社を作り、人工衛星を使って通信キャリア向けに世界の遠い地域に通信できるようにする事業も行い、今日までに12の人工衛星を打ち上げているそうです。
Roivantは2014年に設立されたグローバルなヘルスケア企業。
候補薬物を見つけ出した後、子会社として「Vant」を作り、その領域における薬物を開発。
詳細はよくわからないものの、開発は加速するらしく、実際に市場に流通できるレベルまで育てるとのことです。
現時点で14の薬剤ポートフォリオを展開。
SoFiは2011年に設立されたいわゆるフィンテック企業です。
マーケットプレイス型のローン提供会社、すなわちソーシャル・レンディングを提供しており、学生ローンの借り換えなどで突出しています。
その他にも住宅ローン、住宅ローンの借り換え、個人ローンなどを提供。
学生は自分の通っている学校の卒業生たちからローンを借りることができる、というのが特徴のようです。
米国は学生ローン大国であることもあり、アメリカ国内の銀行を脅かすと言われるほどに成長しています。
Fanaticsはスポーツチームのオフィシャルグッズ販売などを行なっている会社。
アメフト(NFL)、バスケ(NBA)、メジャーリーグ(MLB)など全てのメジャースポーツのプロスポーツリーグのオンライン販売を手がけ、その数は300を超えるとのこと。
Improbableはイギリスの会社で、AR/VRなどの仮想世界やシミュレーションの開発ツールを手がける会社。
仮想世界のゲーム開発環境である「SpacialOS」を提供しています。
Spacial OSでは、クラウドベースのコンピューティング・プラットフォームを提供することで、一つの仮想世界を構成する多くのサーバーリソースを活用でき、より巨大でシームレスな世界を作ることができるとのこと。
Guardant Healthは遺伝子検査によってがん患者に最適な治療法を推薦する企業。
血液を2チューブ提出すると、独自のデジタル・シークエンシング手法により遺伝子を解析。
実際の治療法の中から最も良い選択肢を2週間ほどで提示し、より正確な治療を受けられるようにするそうです。
セコイア・キャピタルやコースラ・ベンチャーズなど、名門ベンチャーキャピタルからの出資を受けていました。
OYOはインド最大のホテル・ネットワークで、198の都市で6500を超えるホテルを扱っています。
OYOが扱う部屋では、常に同じアメニティとクオリティが提供され、なおかつ価格的にもリーズナブルになっているそうです。
また、アプリを使うことでわずか3タップ、5秒で部屋を予約できるユーザー体験の良さも特徴。
創業者のリテシュ・アガルワル氏はまだ23歳と極めて若いことでも知られています。
Slackは2014年にスチュワート・バターフィールド氏によって設立された会社で、チームのコラボレーションツール「Slack」を提供しています。
当初はゲームを開発しており、その社内向けツールとして3年半もの間、開発していたところから転換して現在のサービスを提供。
スチュワート・バターフィールド氏はSlack以前にも写真共有サービス「Flickr」の創業者でもあり、いわゆる連続起業家ということになります。
Plentyはインドア型オーガニック野菜の生産会社です。
農場は都市部のすぐ近くにあります。室内で栽培することで、コンピュータを使って栄養などが管理し、完成したらすぐに届けることができます。
2014年にマット・バーナード氏と農学者であるネイト・ストーリー氏が創業。
Nautoは2015年にアメリカ・カリフォルニア州パロアルトで設立された企業。
自動車にカメラデバイスを取り付け、安全運転を助ける機能を提供しています。
カメラは社内と外側の両方に向いており、居眠り運転をしそうになれば教えてくれたり、ドライバーが誰かを検知したりします。
どうやらトラックの運送会社などがターゲットになっていますね。
また、実際のドライバーから運転走行データを集ることで、それをAIに学習させ、自動運転技術の開発に必要な巨大なデータセットを構築するとのこと。
Brain Corp.は自動走行ロボットを開発する企業。
動画があります。
どうやら、店の掃除などを自動でやってくれるロボットのようですね。
Brain Corpは2009年に世界的に有名な計算論的神経科学者、 Eugene Izhikevich氏とテクノロジー業界の連続起業家、Allen Gruber氏の両名により設立されました。
当初はクアルコムやDARPAなどに技術開発などを提供していましたが、現在は機械学習とコンピュータ・ビジョンを活用して、自律走行ロボットの開発に集中しています。