世界最大の通信会社であるAT&Tについてまとめます。噂によれば、チャイナモバイルから1位を奪還したそうです。
AT&Tの歴史は1876年にアレクサンダー・グラハム・ベルがボストンで電話を発明したことにさかのぼります。
ベルは義理の父ガーディナー・グリーン・ハバードとともに、1877年に「ベル電話会社」をおこします。
その後、長距離電話事業を展開するためにニューヨークを本拠としたアメリカン・テレフォン・アンド・テレグラフ・カンパニーが設立。AT&Tの名前はこの時に生まれたようです。
1899年にAT&Tがベル社を逆に買収し、本拠地をニューヨークに移します。
20世紀にはアメリカ・カナダの電話事業を独占し、「ベル・システム」と呼ばれる企業グループを形成します。
さすがにこれは問題となり、1982年にアメリカ司法省より組織の分割を言い渡され、1984年には「サウスウェスタン・ベル・コーポレーション」や「ベル・アトランティック(現・ベライゾン)」などの地域通信会社が生まれます。
サウスウェスタン・ベル・コーポレーションは1995年に「SBCコミュニケーションズ」に改名し、2005年に旧AT&Tを買収。
SBCコミュニケーションズはそのまま社名を「AT&T」に変更し、現在の形となっているようです。
現在のAT&Tには4つの事業セグメントがあります。
ビジネス・ソリューション(Business Solutions)
最も大きなセグメントで、その名の通り企業向けソリューションを提供。
エンターテイメント・グループ(Entertainment Group)
2番目に大きなセグメントで、「DIRECTV NOW」「TV Everywhere」をはじめとする多様な動画エンターテイメントを提供。
消費者向けモバイル(Consumer Mobility)
消費者向けの移動通信体事業。
国際(International)
メキシコでの通信事業をはじめとする海外事業を展開。
4つのセグメントの売上高を比べてみます。
ビジネス・ソリューションズが最も大きく安定した収益を生み出す中、エンターテイメント・グループの収益が大きく伸びています。
続いてセグメント損益です。
メイン事業であるビジネス・ソリューションズとモバイル事業がそれぞれ毎年150億ドル、90億ドルを超える巨額の利益を生み出しており、それを原資としてエンターテイメントに投資した結果、2016年には60億ドルもの利益が出ていることがわかります。
次に、それぞれの事業セグメントの数値をもう少し詳しくみてみます。
まずはAT&Tのメイン事業であるビジネス・ソリューションズの収益内訳です。
この中で一番大きいのは「ワイヤレス・サービス(Wireless service)」で、2016年には318億ドルもの収益をあげています。
次に大きい「従来の音声・データサービス(Legacy voice and data services)」は2013年に216億ドルあったのが2016年には163億ドルと大きく現象。
代わりに増えてきたのが「ワイヤレス機器(Wireless equipment)」で、4年間で39億ドルから77億ドルへと倍増しています。
ワイヤレス事業の契約者数の推移です。
主に「Postpaid」「Connected devices」の二つが成長し、合わせて8140万もの数に達しています。
AT&Tの中で2番目に大きなセグメントに成長したエンターテイメント・グループの収益内訳です。
512億ドルに達したセグメント収益のうち、364億ドルがビデオ・エンターテイメントによる収益です。
2015年からものすごい成長を示していますが、これは衛星放送サービスを展開するDIRECTVの買収によるもののようです。
次に、なぜかエンターテイメントグループに分類されているブロードバンド接続の契約数もみてみます。
ブロードバンド接続数は、「IP」「DSL」の二つに分類されており、DSLは482万から129万に減少し、IPが948万から1288万まで増加。
消費者向けモバイル事業のうち、サービス収益は2013年の318億ドルから2016年には275億ドルにまで減少。
機器(Equipment)収益は44億ドルから56億ドルに増大しています。
次に、モバイル契約者数の推移。
これは面白いですね。
「支払済(Postpaid)」が3.2万から2.7万にまで減少している一方で、プリペイド式が5817から13536にまで大きく増加しています。
この二つの合計が「Branded」で、だいたい4万くらいの契約者がいるようです。
最後に、国際セグメントです。
データは2015年からですが、ビデオ・エンターテイメントの収益が21億ドルから49億ドルへと大きく成長しています。
ワイヤレス・サービスは19億ドル、機器収益が4.6億ドル程度。
メキシコのワイヤレスサービスの契約者数です。
「Postpaid」が4965、プリペイドが6727の契約数を獲得し、全体では11973契約となっています。
AT&Tの事業セグメントは上の4つで全てですが、同社は国内のモバイル事業を全て合算したデータも公開しています。
メイン事業である「ビジネスソリューションズ」セグメントにもモバイル事業が含まれているためだと思います。
モバイル事業全体の収益をみてみます。
サービス収益が594億ドル、機器収益が134億ドルとなっており、モバイル事業全体では728億ドルの収益があることになります。
次に、ワイヤレス全体の契約数です。
ワイヤレス契約数全体は2013年の11万件から2016年には13.5万件にまで増加。
その中で特に伸びているのは「Postpaid smartphones」で5.2万件から5.9万件に増えています。
最後に、月額課金型のサービスにおいて重要なARPU(利用者あたりの月間収益)とChurn(月間解約率)についてもチェックします。
ここ3年間は60ドル前後に収まっているようです。ドコモよりもやすい気がします。
最後に解約率ですが、全体で1.5%以下というかなり低い水準に収まっています。