今回ご紹介するのは、米国のクアルトリクス(Qualtrics)という企業だ。
彼らが展開するのは、オンラインのアンケートツールなど。一連のサービス群を「エクスペリエンス・マネジメント(XM)」と呼び、一つのカテゴリーとしてまとめる。
クアルトリクスは2018年に新規上場を申請してから、上場直前に大手ITベンダーのSAPが買収。それから2年後、再度の上場申請となった。
現代社会において、「顧客体験」はどんな事業においても重要だ。クアルトリクスはどんなサービスを展開するのだろうか。彼らが提唱する「エクスペリエンス・エコノミー」とは一体なんなのか。
今回は、クアルトリクスの歴史やビジネスモデル、事業数値について二本立てで確認していきたい。
クアルトリクスは2002年、ライアン・スミスらによって創業された。彼は両親ともにPhDを持つ家庭で育った。
きっかけは父親のスコットが「喉頭がん」と診断されたことだ。2001年の夏、ヒューレット・パッカードでインターンをしていたライアンは自宅に戻り、学校も休んだ。
ライアン曰く、父スコットは「超アーリーアダプター」。闘病中にクアルトリクスの土台となるソフトウェアを開発してしまった。病院から帰宅するたびにプロダクトの改善を進めた。
スコットが回復するまでの間に、ライアンは20社の顧客を獲得。プロダクトを改善するための小さなチームも組成してしまった。
初期の顧客はアカデミアが中心。提供したのは、大学向けのアンケートプラットフォームだった。父スコットはビジネススクールの事情に詳しかったし、ライアンはオンラインで教授の連絡先が簡単に見つかることに気付いた。
若きライアン・スミスが行った電話でのセールス活動は面白い。値段について尋ねられた時、わざと「上司に聞きますね」と言って電話を保留にした。具体的な料金プランもなかったにも関わらずだ。
数分空けたのちに「ご予算はいくらですか?」と尋ねる。「数万ドルかな」と言われると、ライアンは「おお、我々の製品は年間4万ドルです」と答えたという。
2004年までに組織は20人規模に拡大。自宅の地下室で創業したので、車を道路に並べることとなり、近所の苦情が絶えなかったという。やがてクアルトリクスは月間10万ドルを売り上げる事業となった。