FortniteはなぜAppleを訴えたのか?創業者ティム・スウィーニーの野望
Epic Games

2020年8月14日、世界的に大人気のゲームタイトル「Fortnite(フォートナイト)」がApple「App Store」とGoogle「Play Store」の両方から削除された。

理由はアプリ内課金に関するガイドライン違反。これを待ち受けていたかのように、運営元のEpic GamesはAppleを提訴Appleの有名な昔のCMを作り替えたものを打ち出し、自らの正当性を大々的にアピールした。

ご承知の通り、AppleはApp Store上で公開されるアプリ内課金について原則30%もの手数料を課している。パブリッシャーにとって、決して小さな金額じゃないのは確かだ。

しかし、アプリストアがあるからこそ簡単にゲームを世界中に公開できるのも事実だ。2010年代、そのおかげで勃興した新興企業の例を挙げるとキリがない。

一見すると「いちゲーム会社のワガママ」にも見えるEpic Games側の主張だが、その背景には創業者であるティム・スウィーニー(Tim Sweeney)の壮大なビジョンがある。

そこで今回は、Fortnite運営元Epic Gamesの歴史やビジネスモデル、ティム・スウィーニーが考える今後のビジョンについて、改めて整理したい。

21歳でゲーム開発会社を起業

1970年生まれのスウィーニーは、米国メリーランド州ポトマックで育った。5-6歳のときには芝刈り機を分解したというほど、機械好きの子供だった。

やがてコンピューターに魅了され、家族のApple IIでプログラミングにのめり込む。そして1991年、メリーランド大学時代に立ち上げたのが「Potomac Computer Systems」、後のEpic Gamesだ。

同年、スウィーニーはパズルゲーム『ZZT』をリリースする。見た目はRPGのフィールドに似ているが、各要素がテキストで表現されていた。

実のところ、スウィーニーはオリジナルのテキストエディタを作ろうとしていた。それが退屈になったのでゲーム化したという。

その結果、ZZTにはゲームエディタと独自のスクリプト言語が内包された。そこには、のちに開発する『Unreal Engine』に直結する要素がいくつもあった。

スウィーニーはZZTを数千コピーほど販売することができ、ゲーム開発を自分のキャリアにしようと決めた。弱冠21歳のときである。まだ実家で働いていて、顧客には作ったゲームソフトを郵送で送っていた

Epic Gamesを特別にした『Unreal Engine』

若きゲーム会社の社長として、スウィーニーは着実に事業を成長させる。そして1998年、大型タイトルとして開発したのが3DのFPSゲーム『Unreal』である。

FPSは「First Person Shooter」の略で、ゲーム配信などでよく見る一人称視点のシューティングゲームである。Unrealは1990年代の終わりに登場したPC向けゲームとして人気を博し、最初のバージョンだけで150万枚が売れた。

Unrealはそれ自体が大きな成功だった。もう一つ画期的だったのが、開発に使ったゲームエンジン『Unreal Engine』をツールとして公開したことだ。

ゲームボーイの『ポケットモンスター 金・銀』シリーズが発売されたのは1999年の終わりだ。ティム・スウィーニーは、20年も前に3Dゲームを開発できるツールを公開していたのだ。

当時のマシンスペックを考えれば、ど真ん中にあったのは言うまでもなくポケモンの方だ。Epic Gamesが作るゲームは「次世代型」に分類されるものだった。

次世代ゲーム『Gears of War』の大ヒット

その後もEpic Gamesは、自社タイトルの開発とUnreal Engineのバージョンアップを並行して進めていく。2006年11月8日にリリースしたのが、大ヒットシリーズの『Gears of War』だ。

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