日本はいまだに世界のGDPの規模でいえば世界第3位の座に君臨しており、経済規模もフランスや成長が激しいインドの2倍もある。さらにGRP(Gross Regional Product/都市別のGDP)で言えば、東京圏は2025年まで世界1位でありニューヨーク、ロサンゼルスよりも高いと試算されている。
人口減少や日本経済が先行き不透明だというニュースを耳が痛いほど聞く。2020年に東京オリンピックが開催されるが、それ以降日本がどうなっていくか不安になっている人は多いのではないだろうか。かつて海外で稼ぎまくった日の丸家電が今や韓国、中国、台湾などのメーカーとの過激な競争にさらされている。更には日本の産業の中でもっとも生産性が高く、世界でも優位性を保っていた日本の自動車産業がイーロン・マスク率いるテスラなどの電気自動車(EV)を作る新興企業に食いぶちを乗っ取られるのではないかと心配している人もいる。
今回は家電などのエレクトロニクス企業や自動車メーカー以外にも海外に積極的に進出し現地の人々の人気を集めている小売企業のユニクロと無印良品の海外展開について見ていく。
■無印は2018年に海外の店舗数が国内を超える
過去のノート「無印はどれくらい海外で攻めているのか。」でも書いたが、無印良品を展開する良品計画の海外進出は積極的である。良品計画はもともと1980年に西友のプライベートブランドとして始まりスピンオフした企業である。無印にとって初めての海外進出は1991年の英国であった。また同年に香港にも進出しているが香港での展開は現地パートナー企業との合弁会社をつくった形での進出だったため、経営の主導権が握れずローカライズに失敗、1998年に撤退したという過去があるようだ。海外での成功の秘訣は、各国の事情を商品に反映させるというローカライズが肝のようである。また無印はその国の首都の一等地の立地のいいところへ出展しその国でのブランド価値を高めるとういう戦略をとっているようだ。一等地での家賃賃料が高すぎると店舗の利益が出ないため、売上に対する賃料を15%以下に保つなど徹底した店舗出展計画を行っている。
2018年に海外店舗数が国内店舗数を超える
無印の国内と海外の店舗数の推移を下の図に比べてみた。国内店舗数は2012年の372店舗から現在まで伸び率が横ばいなのに対し、海外店舗数の伸び率は急成長している。海外での店舗数は2012年の163店舗から2017年5月には400店舗を越え、計画では海外店舗数460と国内予定の424店舗を超え、2018年に海外が国内を初めて超える。毎年平均で19%増という勢いで海外店舗を拡大してるのだ。無印の海外での挑戦は1991年から現在までトライ&エラーを繰り返し、26年経った今店舗数にもしっかりと現れているのである。
(出所: 良品計画データブック)
海外売上
無印の海外での売上は2016年度決算ですでに1000億円を突破しており、2015年度に29%だった海外比率も現在は35%までに達している。そのなかでも中国を中心とする東アジア地域での売上は前年比で47%増加しすさまじい成長を見せている。
(出所: 良品計画データブック)
今後の海外展開
無印は2017~2020年度 中期経営計画の中で、「現場を主役に据えて大切にし、
全員で「良心とクリエイティブ」を実践する
風土と仕組みをグローバルに発展させる」としている。グローバル人材育成や専門家の採用など、海外を見据えた経営を行っていくことを念頭においており、あらたに海外で60店舗を出展する事を目標としている。
ユニクロは世界的なアパレル企業としてH&M、Zaraと肩を並べる企業になった。売上では米国アパレル企業のギャップの売上高約1.5兆円を抜き、2016年8月期の決算では1.7兆円と世界3位まで上りつめた。
2011年にはファッションの中心であるニューヨークの5番街に旗艦店を出展している。当時はバス、タクシー、地下鉄の改札機、電車の車体など、マンハッタン中のありとあらゆる所に広告キャンペーンを行い力を入れていたのである。欧州では2001年にロンドンに1号店をオープンし、16年たった現在は欧州全体で40店舗を出展しており欧州事業の黒字化も達成している。
2016年に海外店舗数が国内店舗数を超える
下の図は国内と海外の店舗数の比較である。海外の店舗数は2008年にはわずか138店舗しかなかったが、2016年には国内の店舗数837店舗を超え958店舗まで急激に増えている事が分かる。2008年から9倍も増加しているのである。
(出所: ファーストリティリングス)
中国でアパレルNo.1を目指す
現在ユニクロは世界に多くの店舗を出展してるが、中国本土には472店舗を出展し台湾や香港を含めると560店舗を出展してる。海外の地域別出店状況をみると海外出店の全体の約60%が香港や台湾を含む中華圏である事が分かる。2020年までに中国で圧倒的なNo.1アパレル企業になる事を目指しているのだ。現在もすでに中国で最も影響力のある経済誌『第一財経週刊』が選んだ
Top Brand in Chinaで、ユニクロは5年連続でアパレル部門の1位を獲得するなど実績を見せている。
(出所: ファーストリティリングス)
■海外売上高比率の両社比較
下記のグラフはユニクロと無印の全売上高に占める海外での売上比率の推移を示している。売上全体に占める海外売上比率を比べると過去10年で海外戦略を推し進めて来た事が分かる。その中で次の点に気づいた。
・両社とも2009年には海外売上比率が10%前後であった。
・両社とも2009年-10年頃から急速に海外での売上比率を上げている。
・両社とも2014年に30%を超え、2016年には無印は35%、ユニクロは45%を超えた。
(出所: 各社IR)
ユニクロと無印良品の海外での店舗数を伸ばし国内の店舗数を上回り、海外売上比率も高まってきている事を見てきた。その中でも目についたのが売上、店舗数ともに中国での割合が高まっていることだ。両社の中国での売上比率を調べてみた。
ユニクロの中国売上高比率
まずユニクロの中国での売上比率である。上で述べたようにユニクロは中国でNo.1アパレル企業を目指している。2016年の全体にしめる中国での売上比率は13.4%に達しており、売上高にすると2390億円となっている。
(出所: ファーストリティリングス)
無印の中国売上高比率
次に無印の中国での売上比率をみてみる。2016年の全体にしめる中国での売上比率は16.5%に達しており2007年の0.17%に比べると大きく成長している。絶対値でみても2007年売上の3億円から2016年の549億円へと大きな事業になった。
(出所: 良品計画 IR資料)
(出所: 良品計画 IR資料)
■まとめ
上に見てきたように日本のアパレル企業のユニクロ、良品計画は海外で積極的に挑戦し、特にここ10年では海外での店舗数を増やし、売上も伸ばしていたことが分かった。
・両社とも国内の店舗数を海外の店舗数が上回る。
・両社とも売上高海外比率が過去10年で急増している。
・その中でも中国での割合が大きく、両社にとって重要拠点である。