Snapchatを提供するSnapの株価が下がり続けている。
上場直後はだいたい330億ドルくらいの時価総額だったのが、200億ドルを割りそうなところまで下がってしまった。
Snapといえば、財務的観点からいえばまだまだクソ赤字企業に過ぎないのだが、ファウンダーであるエヴァン・スピーゲル(26歳)のビジョナリーっぽさやカリスマ性を評価する人は少なくない。
実際、Facebook(Instagram)は近年ずっとSnapchatが実装した機能を後追いコピーし続けている。そういう意味で、エヴァン・スピーゲルとマーク・ザッカーバーグの関係性はかつてのスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツとの関係性にとても似ており、最近のソーシャル・ネットワークにおいて新しい機能を生み出しているのはエヴァン・スピーゲルであり、Snap以外の何ものでもないのだ。
ただ、だからといって実際にSnapの株を買うかどうかを考えると、やはりクソ赤字企業という点が気になる。上場時の報告書によると、直近の決算では売上高4億ドル、営業損失5.2億ドルで営業損失率は128%であった。
まあ、IPOから3ヶ月ほど経って、四半期決算が出たはずだから赤字具合もちょっとはマシになってるのかもしれない。そういう期待を込めてSnapの直近Form 10-Q(四半期報告書)を見てみた。
いつも思うが、SEC Filingというやつは文字が小さい。
さて、2017年1Qの四半期業績を見ると、売上高は1.5億ドル、営業損失は22億ドルにまで膨らんでいるではないか。営業損失率1467%である。悪化している。
なんでこんなに赤字が膨らんでいるのかを知りたいので、もうちょい詳しい箇所をみてみよう。
コストのところを見ると、
売上原価:1.6億ドル
開発費用:8億ドル
セールス・マーケティング費用:2.2億ドル
一般管理費:11.7億ドル(!)
開発費用が膨らむのは会社の性質上、ある程度はしょうがないと思うが、一般管理費が2401万ドルから11.7億ドルに膨らんでいるのはどう考えてもおかしい。
一般管理費の内訳を知りたい。
上の細かい文章を読むと、「一般管理費は前年同期から12億ドル増えた。この増加の要因は、株式ベースの報酬11億ドルで、そのうちCEOへのボーナスが6.4億ドル、残りは主にIPOによって有効になったRSU(制限付き株式)に関する費用」とある。
なるほど。要するに、上場したことでファウンダーCEOのエヴァン・スピーゲルに6.4億ドルの株式報酬と、その他のメンバーに対して合計4.6億ドルの株式報酬が支払われたということだ。
これ、日本だったら叩かれそうだが、アメリカだと割と普通なのかもしれない。にしても四半期売上は200億円にも満たないのに、エヴァン・スピーゲルは650億円くらいの報酬。これは日本なら叩かれる。間違いない。
ただ、Snapのようなインターネット企業にとって本当に重要なのは今後、売上が増加するどうかだと思う。特にSNSのようなサービスの場合、ユーザーが増え、広告売上が上昇しても、営業コストがそれに応じて上昇するわけではないからだ。
もちろんサービスの規模が拡大すれば、それだけ組織を拡大する必要が出てきて、人件費は増えるだろうが、売上原価としてはそれほど増えないのがいいところである。Facebookの利益率が高いのはそのためだと言える。
だから、Snapが年間50億ドルほどの赤字を掘るとして、将来的にそれを超える売上を出せるようになるかどうかが評価の分かれ目になると思う。まあ今期は行って10億ドルくらいの売上だと思うから、黒字化するのはまだ2, 3年先だろう。